【連載】クオリティ・スクールを目指す 第90回 全校読後交流会で豊かな成果

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

中学読書プロジェクトの実践

全国的に朝読書が広がっているが、読書好きは小学校が49.3%、中学校が46.5%である。学校図書館等の利用も週1回以上は小16.4%、中7.6%にすぎない。読書の持つ知的で豊かな体験は十分であろうか。

その読書活動に取り組み、全校生徒400人が約1カ月にわたって同じ課題図書を読んで読後交流を行った中学校がある。東京都杉並区立井荻中学校(赤荻千恵子校長)である(『中学読書プロジェクト』学事出版、2016)。

今回の課題図書は太宰治の『走れメロス』であるが、最初に朝読書の時間(10分×4回)で読んだ後、各クラスの実行委員や教員が論点を整理する。次いで2回目の読書を行い、学級討議を行う。最終の論点を絞り、3回目の読書を行い、発表の準備を行う。読後交流当日は学年代表が発表し、その内容や論点について意見交換を行う。その後、自分の考えをワークシートに再構築する。

全校読後交流会の目指すものは何か。(1)精読し、正解のない問いを考え続ける(2)学校全体での一体感を実感し、集団の考えを発展させる(3)読書活動を推進し、読書の量や質を高める(4)作者との出会いの場をつくり、「ほんもの」体験によって生き方につなげる——。このような意図を持った活動を行うことで「図書との対話、自己との対話、他者との対話」を深めたいとしている。対話の論点を明確にしていることが意見交流を活発にし、深い思考へ導く要因でもある。

とかく個々の読書に限定されがちな世界を集団の取り組みに投げ込むことによって、対話の世界を共創的に築き上げた試みとして極めて豊かな成果があったと考える。

また、井荻中は多様な読書活動を行っていて、3学期に「ブックトーク」がある。学校司書が「おすすめの本」を医療、歴史、国際、情報、職業、生き方の6分野から400冊程度選択し、生徒が読んで紹介する学習である。

他にも、放課後の読書会、学年担任の読み語り、小学校との読書交流、地域のみんなで読書会、などである。

なお本書には、課題・推薦図書の一覧、ブックトークの資料、図書館を利用した教科学習の例、読後交流会で取り上げた図書、読後交流会で使用したワークシートなど、日常の読書指導に活用できる資料がふんだんに載っていて参考になる。

ちなみに国語以外でも学力がかなり向上し、思考力・判断力・表現力等が驚くほど高いというデータが示されている。読書活動の成果が学習活動に結びつくことの証明でもある。

また特に、この本は読んでいて極めて理解しやすかった。各ページのレイアウトが視覚的にもよくできていて、さらに文章が簡潔で無駄がない。その点でも参考にしたい図書である。

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