【連載】校長を目指す教師のために 第8回 学びは目的・他者意識こそ大事

東京都千代田区立麹町中学校 工藤勇一

 

ツアー企画取材旅行からプレゼンまで
ツアー企画取材旅行からプレゼンまで

「協働の学び方」について、特に次期学習指導要領で注目されている「主体的で対話的な深い学び」を実現するための要点を示す。

まずは、教育活動が陥りやすい課題を挙げておく。それは、主体的で対話的な活動であっても深い学びにつながるとは限らないという点だ。

一例として、班別行動を取り入れた修学旅行を考えてみよう。決められた見学場所を団体で巡る修学旅行と比較すれば、より主体的で対話的な活動だ。しかし、決して深い学びとはいえない実態があるのが現実だ。

班別行動中は時間ばかりを気にして、じっくり見学せずに回ってくる場合がある。協力して活動することばかりが強調され、結果としてほとんど誰も読まない壁新聞が廊下に掲示される光景をよく見る。目的として「時間や約束の順守」が意識され過ぎてしまっているからだろうか。

この課題を解決すべく、近畿日本ツーリストの協力を得て開発したのが、「ツアー企画取材旅行」だ。旅行代理店の社員という想定で、生徒には「面白い京都・奈良ツアーのプランを提案せよ」というミッションが与えられる。その瞬間から、生徒たちは「自分たちのための旅行」ではなく、「誰かを楽しませる旅行」を考え始める。修学旅行は取材そのものとなる。現地ではパンフレット用の写真を撮り、街の人や商店の人にインタビューし、最終的には企画にまとめ上げ、班でプレゼンを競い合う。

自分のためにという内向きの目的では、学びの深さには限界があると考える。確かな目的と、伝える相手が明確に見えてこそ、学びが深まるのではないだろうか。この一連の学習では、旅行代理店からデザインや編集担当者らが来校し、専門的な手法について指導してもらう機会を設けた。生徒の様子からは、技術を確実に自分のものにしたいという真剣さと自分なりの創意工夫が随所に感じられた。

深い学びを実現するためには「○○さんが喜んでくれる旅行をつくりたい」「○○さんに企画を上手に伝えたい」のように、「強い目的意識と明確な他者意識」を生徒に持たせられるかがポイントだと私は考える。

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