【連載】国際バカロレアを知るために 第34回 開かれた問いは答えに勝る

都留文科大学特任教授 武蔵野大学教育学部特任教授
リンデンホールスクール中高学部校長 大迫弘和

 

次期学習指導要領で掲げられる位置づけの「アクティブ・ラーニング」について、国際バカロレア教育が参考になるというのは多くの方が認識していると思います。その「アクティブ・ラーニング」とのつながりの中でIBについて書いてみたいと思います。

キーワードは「Student centered leaning(児童生徒中心型の学び」という言葉です。この言葉に対置されるものは「Teacher directed instruction(教師主導型教育)」になります。

これまで日本の学校教育は後者の「Teacher directed instruction」の形を取ってきました。それはそれで戦後70年間、教育に求められてきた社会的使命を果たすためには有効だったといえます。教育の手法として「アクティブ・ラーニング」が掲げられている状況の中で、「Teacher directed instruction」は「Student centered leaning」に転換されなくてはなりません。非常に分かりやすい表現を使うなら「教師主導型のアクティブ・ラーニング」というようなことは、レトリックの用語を使うなら背反畳語、即ち論理的には矛盾した代物ということになります。

なぜでしょうか。それは「Teacher directed instruction」では「アクティブ・ラーニング」によって期待される「主体性」の育ちが損なわれるからです。子供たちは先生によって与えられる「答え」を待つ、受動的な姿勢で授業に参加しています。そのような姿勢の中では、いかに「協働」的な学びに時間が使われようと、最後の先生による「答え」が、そのために使われた時間を全て無意味なものにしてしまうのです。

「答え」は必要です。IBの生徒も時々「今日の授業はなんとなくぼんやりとした形で終わってしまった」と不満を口にする場合があります。それは本来与えられるべき「答え」が与えられないときに発生する不満だと思います。

「答え」は必要です。と同時に、与えられた「答え」が最終ゴールではないとの押さえが大切です。与えられた「答え」は、次の「問い」を生むものである必要があり、IBが大切にする用語で説明するなら「答え」が「Open-endedな問い」(開かれた問い)につながることが大切なのです。

その意味で、今、教師に問われているのは、一つの閉じられた「答え」を与える教師から、開かれた問いを発せられる教師に変われるかということになるかと思います。

「開かれた問い」と向き合うとき、子供たちの中ではどのようなことが起こるでしょうか。それは単なる事実の暗記ではなく、概念を形成していくという、次期学習指導要領に向けた言葉でいえば「深い学び」が行われていくようになるのです。IBでは「Questioning is more important than answering.(問うことは答えることより大切)」という言い方をしています。

「アクティブ・ラーニング」を成功させるためには、「Student centered leaning」を徹底していくことがとても重要なポイントになるのです。

関連記事