【連載】中教審答申 ここに注目①

帝京大学教職大学院教授
全国連合小学校長会顧問 向山行雄

 

変わらぬ良さと変えるべき事柄を峻別
1.中教審答申の概要の把握

中教審答申は、第1部「学習指導要領改訂の方向性」と第2部「各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性」から成る。第1部は10の章で編成されている。特に注目したいのは次の3つの章である。

まず第4章「学習指導要領の枠組みの改善と社会に開かれた教育課程」。ここでは、「学びの地図」としての枠組み作りとして、6点を示している。今後、この枠組みを基にして「総則」を抜本的に改善する。

また教育課程を軸に学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」について3つの側面から述べている。

さらに、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の実現の授業改善に向けた取り組みの活性化を述べている。

2番目には第5章「何ができるようになるか―育成を目指す資質・能力」に着目したい。ここでは、育成を目指す資質・能力についての基本的な考え方、資質・能力の3つの柱に基づく教育課程の枠組みの整理、教科等を学ぶ意義の明確化、教科等を超えた全ての学習の基盤として育まれ活用される資質・能力、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力、資質・能力の育成と子供たちの発達や成長のつながりについて述べている。

3番目に第6章「どのように学ぶか―各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実」。学びの質の向上に向けた取り組み、「主体的・対話的で深い学び」を実現することの意義、発達の段階や子供の学習課題に応じた学びの充実について述べている。

第2部では、特に所管する学校種別や関わりの深い教科等を中心に読解する。

2.学習指導要領の読み方

学習指導要領の改訂は、およそ10年に一度。通常の教師生活で4回の改訂を経験する。初めの改訂は若手教師でチンプンカンプン。2回目は中堅世代の実践者として最前線に立つ。3回目と4回目は、幹部教員や管理職として、教員をリードする。

10年に一度、改訂されるが、日本の学校教育の大部分は変更されずに、次の世代に継承される。それは、20年ごとに行われる伊勢神宮の式年遷宮に似ている。遷宮に従事する人たちは社を建て替え、様式を後世に伝えてきた。私たち学校関係者も、10年に一度、学習指導要領を見直すことで「変わらぬ良さ」と「変えるべき事柄」を峻別しなければいけない。流行を追うように、新しいことばかりに目を奪われないようにしたい。

PISAなどの結果のように、わが国の学校教育は世界に冠たる実績を上げている。一部に課題はあるが、山間へき地や島しょの学校まで、多くの児童生徒に教育の機会均等をこれだけ実現している成果は率直に認めるべきである。

そうした初等中等教育の成果と課題を踏まえつつ、新学習指導要領の実施に取り組む。

3.学校としての準備の仕方

趣旨理解を図るために、学習指導要領解説、新教育課程ファイルを全員に配布。校内に新教育課程実施のための3委員会(通知表改訂委、社会に開かれた教育課程委、学習指導改善委)を設置。そのため組織と活動のスリム化を進めるとよい。

職員に次の課題を課し、自分のペースで自己啓発する指針とする。

(1)中教審答申を読みましたか(2)「総則」を読みましたか(3)「特別の教科 道徳」を読みましたか(4)「子供たちに求められる資質・能力」について理解できましたか(5)「社会に開かれた教育課程」の意味を理解できましたか(6)自分の専門とする教科等で新旧の比較ができますか(7)「カリキュラム・マネジメント」の意味を理解できましたか(8)平成32年度までのスケジュールを描けますか(9)「アクティブ・ラーニング」の意味を保護者に3分間で分かりやすく説明できますか。

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