【連載】新任校長のチャレンジ 月別の校長術最強指南10

教育新聞論説委員 寺崎千秋

 

1月
次年度の教育課程編成・指導計画作成
短期を重点化で乗り越える
中央教育審議会答申を視点にして

昨年12月21日に中央教育審議会が「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」の答申を出した。これに基づいて今年度末には新学習指導要領が告示される。本紙社説等で論じているように、この答申の趣旨を把握し、次年度の教育課程に可能なところから反映させていくことが必要である。なぜなら、答申の中でも、これからの学校教育および教育課程への期待は「学校教育が長年その育成を目指してきた「生きる力」を改めて捉え直し、しっかり発揮できるようにしていくことである」としている。すなわち、これまでの教育課程をつなぎ、質を高めるものであるからである。

そのために「社会に開かれた教育課程」を編成し、「カリキュラム・マネジメント」の実現と「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニングの視点)による授業改善を行い、子供たちが未来をひらくために必要な「資質・能力」を育む教育を推進することを求めている。次年度の教育課程の編成においてもこれらを意識して行うことが今後へのよき準備となり、見通しをもったスタートを切ることになるからである。

校長はこのことを強く認識して教育課程の見直しと改善を、先端となってリードしよう。

教育目標と教育課程の関係を見直す

教育課程の見直しの前提として、学校の教育目標と教育課程との関係を改めて見直してみよう。答申においても「学校教育目標を踏まえた」教育課程の編成を求めている。本来、教育課程は自校の教育目標の実現を目指して編成されるものであり、その教育課程を実施した結果、教育目標に掲げた子供の姿が具現するのは当然至極なのである。

しかしながら、多くの学校では教育目標は掲げてあるだけで、教育課程と乖離し別個の存在になっているのではないかと危惧している。毎年、教育課程を実施し改善していることになっているが、教育目標の方向に子供が育ったという事例をあまり聞かない。自校の教育課程が学校の教育目標を具現するためにどのような内容、方策や手立てを重視し編成されているかを見直さなくてはならない。例えば、教育目標を具現するために各教科等で重視する内容や能力は何か、それを身に付けるための学習指導の視点とその具体策や手立てが具体的に示されているか、というように、教育目標を日常の授業に下ろし、つなげるようにする。

子供一人一人の育ちを教育課程に位置づける

答申では「子供一人一人」がキーワードとして随所に登場する。未来をひらく子供一人一人をより大切にし教育を進めることを求めていると受け止められる。答申の「学習指導要領等の枠組みの見直し」では、「『学びの地図』としての枠組みづくりと、各学校における創意工夫の活性化」の項で「子供一人一人の発達をどのように支援するか」を示し、「第8章」において具体的に解説している。すなわち「学習活動や学校生活の基盤となる学級経営の充実」「学習指導と生徒指導」「キャリア教育(進路指導を含む)」「個に応じた指導」「教育課程全体を通じたインクルーシブ教育システムの構築を目指す特別支援教育」「子供の日本語の能力に応じた支援の充実」などである。

これらの視点は、現行の教育課程においても位置づけられているはずである。これが明確に位置づけられ機能しているかを評価し必要に応じて教育課程を改善する必要がある。

これまで教員の一人一人の週の指導計画にこれらを位置づけてきたか、学校評価の形成的評価において見直しをしてきたか、などを含めてこれらを見直し改善を図るようにする。

教科等横断的な視点で教育課程を見直す

答申においては教育課程を軸に学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現を重視しており、これらは今すぐにでもできることである。特に、第一の視点を重視する必要がある。「各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校教育目標を踏まえた教科等横断的な視点で、その目標達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと」の実践である。このことは現行の教育課程においても行われているはずであるが、教職員のこれに対する意識は低い。要するに「全体計画」を機能させることである。

現行教育課程においても「道徳」「体育」「総合的な学習の時間」「特別活動」においては、学習指導要領やその解説書において「全体計画」を作成することを求めている。また、総則では「合科的・関連的な指導」を、総合的な学習の時間では「各教科等で身に付けた知識・技能を相互に関連付け、総合的に働くようにする」ことを求めている。これら全てを見直し、教科等横断的な視点で学校の教育目標にアプローチする教育課程の編成に向け改善を図るようにする。

指導計画の作成と役割分担に取り組む

次年度の教育課程の編成と並行し、改善した教育課程に基づく年間・単元指導計画を作成する。改善の具体策や手立ては指導計画に位置づけなくては次年度につながらない。個々の教員の週の指導計画はこの年間・単元指導計画に基づいて作成し日々実践するからである。その作業をいつから始めていつ仕上げるか、工程表を作成し各教科等の役割分担を決める。

全体計画や各教科等の相互の関連を意識して作成する。指導計画を縦・横・斜めに見直して教科横断的な視点が具現されているかを見取り、修正する。これらは1月から3月中頃までに計画的に行い、3月中旬には仕上げておく必要がある。3月下旬は4月からの教育課程の準備や教材研究を行うから、その基となる指導計画が出来上がっていなくてはならないからである。多忙な中であり見通しをもって取り組めるようにする。

「行く・逃げる・去る」で終わらないように

1月は教育課程の見直しと改善作業を計画的・組織的に行うとともに、2月・3月の指導計画の改善につなげる月である。以上のように意図を明確にして工程表を作成し、役割分担を明示して取り組むようにする。工程表や役割分担表は職員室に掲示し、進行状況が把握できるようにしておく。教育課程の編成・指導計画の作成は教師のプロとしての証でもある。

この改訂期に経験を積むことが自信と誇りになるよう教員を指導しリードする。1月は実質16日程度、2月は20日前後、3月は15日前後であろうか。全部でも50日程度である。あれもこれもと欲ばると結局何も得るものがなく、格言「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」のような結果になりかねない。この間にやるべきことは一つか二つに絞って重点化し、そこに全教職員の力を結集して取り組むようにリードすることが校長の責務である。教育課程改訂期に入る次年度を見据えて、教育課程の見直し・改善の視点から学校経営、学校文化等々を見直し、次年度の学校経営ビジョン、経営方針や経営計画の構想を確立していくようにしよう。