【連載】教育の落とし穴 子どもの安全・安心を考える 10 不登校の理由を先生は気づいているか

名古屋大学大学院准教授 内田良

 

■学校側の回答

文部科学省が毎年実施している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」は、平成28年度の調査で、ちょうど50回目を迎えた。私たちが普段見聞きしている、いじめや不登校といった代表的な教育問題の数量的データは、この調査結果が元となっている。

さて、ここで注目したいのが、問題行動調査の回答者は学校側であるという点だ。子供本人の意見ではなく、学校側の意見が、公に数値として発表されている。はたして、子供自身が回答すると、どのような結果が得られるのだろうか。

「不登校になった理由」を一例にして、この課題を検証してみたい。実は、文部科学省はかつて、不登校経験者に直接調査を実施したことがある(『平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書』として公開)。調査では、かつて中学校で不登校を経験した生徒に追跡調査を実施し、不登校当時やその後の状況を尋ねている。この本人調査と先の問題行動調査は、厳密には同じものではないが、いくつかの質問項目では、比較検討が十分に可能である。

m20170119_02■「先生が原因」は認知されず

不登校の理由として両調査では、14の選択肢(複数回答可)が挙げられている。全体的傾向としては、本人調査では理由は約3つが選択され、問題行動調査ではおおよそ1つに絞られている。子供本人は、不登校に至るにはさまざまな要因があると考える一方で、学校は、そのようには捉えていないようである。

14の選択肢には、親、友人、教師との人間関係が含まれている。2つの調査の間に大きなずれが見られるのは、「教師との関係」である。

問題行動調査では、教師が原因とする回答は1.6%にすぎないが、本人調査では26.2%に達する。本人と学校が、まったく異なる「不登校の理由」を思い描いていては、会話さえ成立しない。認識のギャップを認識する必要がある。