【連載】中教審答申 ここに注目②

中部大学教授 宮川秀俊

 

学校教育活動全体でESD活性化を期待

2014年の「持続可能な開発のための教育(ESD)に関する世界会議」を契機として、ESDの推進拠点に位置付けされているユネスコスクールへの加盟が急増した。この学校の多くが、次期学習指導要領におけるESDの取り扱いに関心を寄せている。

そうした中で、一昨年8月の教育課程企画特別部会の「論点整理」では3ページに、また昨年8月の教育課程部会の「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」では、本文の10、13、17ページにESDの理念、内容と方法が記載され、その後の動向が期待されていた。

前者では、審議のまとめ(案)のポイントの1ページに、改訂の基本方針としてESDの考え方と「生きる力」を育むこととの連携の大事さが示されている。

これを引き継ぐ昨年12月の本答申では、第1部「学習指導要領等改訂の基本的な方向性」の第2章「2030年の社会と子供たちの未来」の”我が国の子供たちの学びを支え、世界の子供たちの学びを後押しする”において、「(前略)我が国は、持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議のホスト国としても、先進的な役割を果たすことが求められる」が、本文の12ページに示されている。

しかし、この他審議のまとめの本文2カ所に記述されていたESD関連については、答申では第3章の16ページ、第4章の19ページに注釈としてトーンダウンした。

一方、新たに、第5章「何ができるようになるか—育成を目指す資質・能力」の「5.現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」(グローバル化する社会の中で)において、「(前略)国際的に共有されている持続可能な開発目標(SDGs)なども踏まえつつ、(中略)持続可能な社会づくりにつなげていく力を育んでいくことが求められる」が40、41ページに加えられた。上記に係る補足・参考資料では、ESDの定義と歴史的な経緯が一貫して示されている。

これらの推移により、ESDに関する論議がさまざまな観点から行われたと推察される。

次期の教育課程でESD活動を推進するには、現状のユネスコスクールならびにESD活動を把握しておく必要がある。その中で全国を対象とした調査から、「(1)ESD活動に地域や校種による量的な差があった」「(2)学校内に目を向けると教科による偏りや、教員間・教員と管理職間の意識差(いわゆる温度差)がみられた」「(3)ESDの理念は理解できたとしても、実際の学校教育でどのような内容と方法で進めるかという現実的な課題に直面している」などが課題として挙げられている。

これらのことを背景として、全国の学校教育におけるESD活動のさらなる展開と充実を求めるには、(1)では、国や県等の教育行政機関や関連団体による積極的な指導と教員研修が必要であり、(2)では、本答申で強調されているカリキュラム・マネジメントのように、各学校が設定する教育目標を実現するための教育課程を編成し、その中でESD活動を実施・評価し、そして改善していくことが重要である。そのためには、いうまでもなく、各学校の管理職のリーダーシップが求められる。

また(3)では、従来の教育内容と教育方法を尊重しつつ、(1)これまでの教育活動をESD活動に切り替える(2)これまでの教育活動とESD活動を並行して行う(3)これまでの教育活動を順次ESD活動に置き換える(4)従前の教育活動にESD活動を含み込む——というように分類して教育実践を計画し実施するのも一案であろう。これは、ESD活動の円滑な遂行だけでなく、その効果や評価の確認につながることにもなる。

これから告示される新学習指導要領、それに基づいて制作される教科書において、ESD活動の内容と方法が校種や教科等で具体化され、ひいては学校教育全体でESD活動が活性化されることを期待したい。

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