【連載】学校経営“旬”の課題「教職研修」岡本編集長の3分解説 第8回 不登校ゼロ」の落とし穴

平成27年、岩手県矢巾町で起きたいじめ事件。「いじめゼロ」という数値目標が注目されました。

「わが校のいじめはゼロです」と報告することが意識されるあまり、「いじめの認知」「いじめの把握」が困難になることが理解されたのです。

これを受けて、文部科学省はいじめの認知を「肯定的に評価する」との方針を明確化しました。「いじめゼロ」は評価されない、むしろ「認知件数が増えること」を目指すべきとしたのです。

さて、今回のテーマは「不登校ゼロ」。この数値目標の設定は、「いじめゼロ」と同様に危険ではないのでしょうか。

現に「不登校ゼロ」を目標として掲げる自治体、学校はあります。注目したいのは、この目標を達成するために学校は何をするのか、です。

子供が安心でき、自主的に「通いたい」と思える学校を目指して、子供が「居場所」と思える学校を目指して、さまざまな取り組みがなされるのが理想です。

他方で、学校の内部には目を向けず、ただ不登校児童生徒に登校を促す働き掛けをするだけ、という学校はないでしょうか。

名古屋大学の内田良准教授は、「『不登校ゼロ』というスローガンは……逃げ道が閉ざされてしまう。陰湿ないじめを受けながらも、学校に行き続けることになる」と指摘しています。

学校にあるかもしれない問題が解消されないままの「不登校ゼロ」の推進は、子供の幸せではないのです。

「不登校ゼロ」は、その数値自体を目指すのではなく、学校側の取り組みの結果としてそうなっているのが理想なのではないでしょうか。

『みんなの学校』で一躍有名になった大阪市立大空小学校。「すべての子供が安心できる居場所をつくる」を理念に掲げていますが、ただのお題目ではありませんでした。

特別な支援を必要とする児童も共に普通教室で学ぶなど、理念を現実にすべく真摯に実践し続けた結果、「不登校ゼロ」が達成されたのです。

この学校の真摯な努力にこそ学びたいと思います。

「不登校ゼロ」は、学校のためなのか。子供のためなのか。根本の問いに立ち返りたいです。【岡本淳之】

【『教職研修』2月号のヘッドライン】巻頭インタビューは山川龍巳・わらび座代表取締役社長。秋田の地域創成の奇跡。特集1は「新年度からの、誰もが通いたくなる学校づくり」。「不登校ゼロ」という数値目標の陥穽とは。特集2は「教育基本法、改正10年」。改正による学校への影響を探る。

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