【連載】校長を目指す教師のために 第10回 これからのリーダー指導

麹町中の文化祭「麹中祭」で
麹町中の文化祭「麹中祭」で
東京都千代田区立麹町中学校 工藤勇一

 

「協働の学び方」として、特に「これからの時代に求められるリーダー指導の在り方」について述べる。

「そこの君たち、うるさいよ。ちゃんとリーダーの指示を聞いて、話し合いに協力しなさい」

協働学習では、教師のこんなせりふが日本中の中学校で当たり前のように聞かれる。大袈裟な言い方だが、このような指導のあり方こそが、日本のリーダー育成を阻んできたと私は思う。

日本の学校では、あらゆる場面で協調性が尊ばれてきた。特別活動では、自ずとフォロアーの育成に力が入る。もちろん、これは日本の教育のよさであり、世界に誇れるところでもある。しかし、「人は協力するのが当たり前」との前提で、これからの時代を担うリーダーなどに育つだろうか。現実の世の中はさまざまな困難や障壁が待ち構えている。そもそも、人を説得したり、折衝したりするのは、簡単ではないはずだ。国際化が一層進展する中で、異なる価値観、考え方を持ち、異なる利害関係を持つ人々と渡り合える人材が求められている。

これからのリーダー育成は「人は協力しないのが当たり前」を前提にすべきだろう。協働学習では、リーダーたちに事前に、ぜひ、こんな声をかけたいものである。

「人は普通動いてくれないものだ。動かない人を動かしてこそ、リーダーだ。そのためにどんな言葉を発するか。どんな工夫をするか。そこが大事だ。作戦を練ってみろ!」

こうした考えに立って行っている本校の象徴的な行事が、体育祭と文化祭だ。企画運営のほとんど全てを生徒が担う。実施前、私はリーダーたちに一つのミッションを与える。体育祭では「運動が苦手な生徒も得意な生徒も、全員が楽しめる体育祭を実施せよ!」。文化祭では「地域の方々、保護者、小学生、観客の皆さん全員を楽しませろ!」だ。リーダーたちは目的達成をめざし、意見をぶつけ合いながら、生徒全員を巻き込んでいく。

思い込みで判断することなく、情報を正しく把握し、適切な方法を判断する。現状に満足することなく、独自の創意工夫で成果を上げる。一人の力では実現困難な課題に対して、仲間や周囲を巻き込んで成功に導く。学校教育の中で、こんなたくましいリーダーを育成してきたいものだ。