【連載】教育の落とし穴 子どもの安全・安心を考える 11 部活動は「麻薬」なのか

名古屋大学大学院准教授 内田良

 

中学生・高校生・教員における部活動日数(1週間あたり)の理想と現実[神奈川県、平成25年調査]
中学生・高校生・教員における部活動日数(1週間あたり)の理想と現実[神奈川県、平成25年調査]
■20年前の報告書から

文部科学省が今年の年明け早々に、運動部活動の休養日に言及する通知を発出した。「適切な休養を伴わない行き過ぎた活動は、教員、生徒ともに、さまざまな無理や弊害を生むという指摘もある」ことから、平成9年の「運動部活動の在り方に関する調査研究報告書」に基づいて、中学校では「週当たり2日以上の休養日」、高校では「週当たり1日以上の休養日」を設定するよう求めた。

その報告書から20年が経過した今も、同じ文言が繰り返されている。いくつかの調査結果を見ると、運動部の活動量は増加傾向にある。かの時点の危惧から、事態は改善どころか悪化してしまった。なぜこんなふうに、抑制が効かずに過熱してしまうのか。

■部活にハマる

あるテニス部顧問の先生が、興味深い経験談を教えてくれた。ひとたび生徒をきちんと指導すると、生徒は確実に力をつけていく。試合に勝てば、生徒も保護者も喜ぶ。もちろん自分も嬉しい。チームの一体感も高まる。「次の大会ではもう一つ上に行こう!」と、さらに力が入っていく。

気づいた頃には、土・日曜日の休みは全て失っていた。授業準備の時間も奪われ、プライベートの時間などどこにもなかった。だが、もう後戻りはできない。

神奈川県が25年に実施した運動部活動に関する調査では、中学生・高校生・教員のいずれにおいても、理想とする部活動の日数(1週間あたり)よりも、現実のそれのほうが長い。先生も生徒も、理想では「もう少し休んだほうがいい」と思いつつも、現実には土・日曜日を費やして練習している。先生も生徒も、互いに首を絞め合っているように見える。

上述の先生は、部活動に抑制が効かない状況を、「部活は麻薬」と表現した。なるほど部活動は毒ではない。むしろ楽しすぎてハマっていく。
だからこそ、生徒も教員も保護者も、みんなで自覚的に、ハマり込んでいく力にブレーキを掛けていかなければならない。