【連載】国際バカロレアを知るために 第35回 探究学習で基礎学力確かに

都留文科大学特任教授 武蔵野大学教育学部特任教授
リンデンホールスクール中高学部校長 大迫弘和

 

IBの学習は「探究型概念学習」です。これと対置する学習は「記憶型事実学習」と呼ぶことができると思います。事実を記憶していくことが中心になっている学びです。日本では戦後70年間、この「記憶型事実学習」が続けられてきました。

PISAの結果も取り戻しつつあり、日本の教育の「よさ」が再び世界からも注目を浴び始め(日本型教育の海外「輸出」を進める「日本型教育の官民協働プラットフォーム」というものも始動しています)、これまでの「記憶型事実教育」が「それほど悪くない」といった考え方がこの頃強くなっているようにも感じます。

特に「記憶型事実教育」によって形成されてきた「基礎学力」については、これまでもIBのような「探究型概念学習」を実施すると「基礎学力が育たない」といった「批判」がよく出て来ていたのですが、「日本型教育」へのこだわりの風潮が強まる中で、その「批判」は勢いづいているように思います。

「探究型概念学習」を行うと「基礎学力」が育たないのか。その問いに対して私は明確に「そのようなことはない」と答えます。いや、むしろ「探究型概念学習」により「基礎学力」も確かなものになると言いたいと思います。

「探究型概念学習」は「記憶型事実学習」から移行して行われるものではありません。「記憶型事実学習」がすっかりなくなり、学びのすべてが「探究型概念学習」に取って代わられるのではありません。「探究型概念学習」は「記憶型事実学習」の上に積み重ねられていくものなのです。IBに強い影響を与えている教育学者のリン・エリクソン博士は「記憶型事実学習」を「二次元の学び」、「探究型概念学習」を「三次元の学び」と呼んでいるのも、そのことを意味します。

むしろ「探究型概念学習」により「基礎学力」も確かなものになると書きました。それは「丸暗記」、即ち「意味は分からないがとにかく覚える」という基礎学力の付け方から「意味を理解して覚える」という基礎学力の付け方への変換が行われるなら、そうなるということです。

IBの学習では「理解する」ということが大切にされます。子供たちの「理解」が進むように授業は工夫されています。ですから子供たちは、「探究型概念学習」を行うときにはもちろん、「記憶型事実学習」の際にも「理解」しながら進もうとします。そのような姿勢で形成されていく「基礎学力」が、単なる丸暗記で形成された「基礎学力」よりも確かなものになるのはいうまでもありません。

見たことがあるかと思いますが、「学びのピラミッド」です。これまで日本の教育は一番下の「記憶」に多くの時間を割いてきました。これからはその上にある「理解」を含めなくてはなりません。目標は、21世紀を生きるために求められる「創造」なのですが、まずは一段上にいくことから始める必要があるのです。