【連載】教育の落とし穴 子どもの安全・安心を考える 12 学校教育に「家族」は必要か

名古屋大学大学院准教授 内田良

 

愛知県「2分の1成人式」啓発資料/「親子でよかった。」(2009年刊)
愛知県「2分の1成人式」啓発資料/「親子でよかった。」(2009年刊)

■広がる「2分の1成人式」

小学校で急速に普及している学校行事がある。「2分の1成人式」と呼ばれる4年生(満10歳)向けの行事だ。開催時期は、1月から3月が主流で、授業参観の場合と同じように、小学校に保護者を招いて実施される形が多い。

式の主な実施項目としては、将来の夢を語る、合唱をする、「2分の1成人証書」をもらう、親に感謝の手紙を渡す、自分の生い立ちを振り返るなどがある。ベネッセの調査によると、9割もの保護者が式に満足しているという。

10歳の通過儀礼を設けること自体には、それなりの意義があるかもしれない。だが、その実施項目は、特に次の2点において、慎重に検討されるべきである。

■「家族」は教材か

第一に、親との手紙のやりとりである。式では、親への感謝の手紙が読み上げられる。さらには、サプライズで親から子供に手紙が渡される場合もある。会場中が、涙で包まれる。

だが、「親は感謝されるほどに、子供に尽くしているはず」というのは幻想だ。一部の家庭では、子供が虐待状況に置かれている場合がある。親に感謝とは、あまりに酷な課題である。

第二に、生い立ちを振り返ることである。自分の名前の由来を親から聞いたり、生誕時の写真を家からもってきたり、それらを含めて「自分新聞」をつくったりする。
そこでは、離婚や再婚もなく、子供は実父母のもとで育てられているという単純な家族像がベースになっている。家族の多様化が進む時代において、「保護者に子供の過去のことを問えば、すぐに答えが返ってくる」という発想は、そろそろ賞味期限切れである。

学校は、子供の家庭状況をあれこれと活用する場であってはならない。なぜなら、家庭背景に関係なく、子供たちが前を向いて生きていけるようになることこそが、学校教育の役割だからである。9割の大多数が満足しているからそれでよい、という問題ではない。

(おわり)