【連載】中教審答申 ここに注目⑥

北海道教育大学釧路校キャンパス長 玉井康之

 

生きる力とキャリア教育の関係

今回の学習指導要領の改訂に向けた中教審答申全体の特徴は、社会とのつながりや社会の中で生かすことができる能力を重視した点である。最終的には「何ができるようになるか」をキーコンピテンシーにしている点がポイントとなる。

これまでの学習指導要領では、学校教育期間に学校の中で学ぶ内容を示す傾向にあったが、今回の答申では、子供たちが大人になる2030年頃までを念頭において、長期的・総合的な資質・能力の育成を捉えている。

答申では新しい時代に必要となる資質・能力の構成要素として、「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の涵養」「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力の育成」を重視している。これらの資質・能力は、学校教育の中だけでなく、卒業後も社会の中で生かされる力を重視したものであるといえよう。

これらの能力を具現化するためには、「何を学ぶか」だけでなく、「どのように学ぶか」が重要で「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習過程の方法を提起したところが特徴的である。すなわち知識・技能を「活用」する観点に立って、学校教育時代の主体的な態度を育成する、としている。

教育課程と社会とのつながりにおいても、「より良い学校教育を通じてより良い社会を創るという目標を共有し、社会と連携しながら未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む」とする。このためには、教育課程の内容が社会と関連しているのを常に意識できるような「社会に開かれた教育課程」が重要であるとした。

この「社会に開かれた教育課程」は、問題用紙上の問題を解いて得点を高めるだけでなく、日常生活での現象解明や応用的な活用など、常に社会とのつながりを意識していくことが重要だ。この「社会に開かれた教育課程」は、全教科を横断的に関連させながら捉えるものであり、そのためのカリキュラム・マネジメントの重要性を示している。

この「社会に開かれた教育課程」の具現化の連続的な取り組みが「生きる力」につながる。「生きる力」は前回の学習指導要領でも重視されたが、今回も大きなスペースを割いて、長期的に育てたい姿としての「生きる力」とそのための横断的な教育課程をいかに具現化していくかを捉えている。そのためにもコミュニティ・スクールや地域学校協働活動の推進など、学校経営全体をいかに社会と関連した運営に改善していくかを捉えている。

このような社会の中で生きて働く能力や「生きる力」の提起の背後には、実はキャリア教育が伏線として展開してきた。今回の中教審答申の中でも、「生きる力」と関連させてキャリア教育の視点が必要であるとしている。

平成23年の中教審答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」では、「基礎的・汎用的能力」の概念を打ち出し、その能力の要素として「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」が重要であるとした。これらの「基礎的・汎用的能力」は直接得点として可視化できるものではないが、「生きる力」の育成に向けて求められる重要な課題である。

特に「課題対応能力」は、これまでの知識・技能の獲得に重点が置かれた時代とは異なり、新たな問題に対応できる創造的な能力や複合的な能力の活用が求められている。これらの創造的な能力がキャリア教育として求められるのであれば、キャリア教育の内容を学校教育時代から育成しなければならない。キャリア教育が伏線となって、学習指導要領では「新しい時代に必要となる資質・能力」や「開かれた教育課程」「主体的・対話的で深い学び」などのコンピテンシーが打ち出されたと捉えることが重要である。