【連載】クオリティ・スクールを目指す 第95回 いじめの事例問題追究が必要

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

「被害者も悪い」3割という実態

最近、横浜市のいじめ問題が話題である。福島市から転居してきた子供を「キン」をつけて呼び、暴力を振るい、おごらせるなどの行為から、不登校に陥らせた事例である。

相変わらず繰り返される学校や市教委の不適切な対応が新聞等で連日のように指摘された。しかし、福島市の転居児童生徒をいじめのターゲットにしたのは横浜市のみではない。

例えば、1月28日の日経新聞にも、福島県から千葉県に自主避難した3世帯の子供たちが小・中学校で「放射能が来た」と言われるなど、いじめ被害にあっていたという。そうした被害で転校した子供もいたという。

背景には大人や社会の影響がある。原発事故から6カ月過ぎて、ある県の商店が福島産の野菜を特売しようと宣伝したら、反対のメールや電話で取りやめにしたという。安全が確認されていながら、風評だけで不買が起きる。その家庭の話題が子供に伝わる。噂からいじめが生まれる。

いじめは子供のみがつくりだしているものではないであろう。しかし、福島から必死の思いで転居しながら、そこでいじめに出会うのは子供や家族にとって耐えられないことである。温かく受け入れる学校の雰囲気はなかったのか。

最近の学校はそうした特別な事情のある家庭についても、個人情報保護条例によって関わろうとしない風潮が強い。教師と家庭の絆は一層弱くなりつつある。

ところで、いじめ問題に新たな課題が示されるというニュースがあった。毎日新聞の1月26日の配信であるが、金沢市教委が今年度、市内の小・中・高校の全児童生徒3万5千人を対象に実施した、いじめに関するアンケートで、小・中学生の約3割が「いじめられる人にも悪いところがある」の質問に「ある」と答えているというのである。さらに「思わない」は小が34%であるが、中は18%と極めて少ない。「分からない」は小37%、中47%であった。

いったいこの回答はどういう意味をもつのであろうか。全国学力・学習状況調査の子供への質問項目では「いじめがよくないと思うか」に「そう思う」が小中共に95%程度で、いじめ肯定は少数である。この数値に比べても金沢調査の結果は特別に見える。

つまり、「いじめ」は「よくない」と判断していても、実際のいじめの場になるとどう考えるべきか、判断が不確かになる子供が多いということではないか。
表面的な調査で満足せず、具体的な事例に基づいて道徳の時間などで徹底討論することの必要性を金沢調査が示していると考える。「考え、議論する道徳」の基本となる課題である。