【連載】校長のパフォーマンス 第71回 オープンイノベーション

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

最近、企業ではオープンイノベーションが広まっているという。ハーバード・ビジネス・スクールのヘンリー・チェスブロウ助教授の提唱した概念ということであるが、イノベーションを起こす場合、企業内のみの内部資源で進めないで、大学や他の企業を積極的に活用することが有効だとする主張である。

企業は多くの場合、イノベーションによって他との差別化を図ろうとするのが常である。しかし、最近は競争環境の激化、研究開発費の高騰、人材不足、発明や発見の不確実性などがあって、特に短期的な成果等は極めて難しくなっているという。

そこで、他の企業や大学研究室等との共同開発が期待されるのであるが、秘密保持を厳重に行う必要があると同時に、共同開発の成果が十分に得られるものか極めて慎重な判断が必要とされる。オープンイノべーションはよい発想ではあるが、いざ実施しようとするとかなりのカベが出現する。

学校はどうか。学校もまた最近、大学や優れた指導者の知恵や力を借りて共同で授業実践の成果をあげている例がある。企業のように秘密保持や激しい競争意識がないことから積極的にオープンイノベーションを考えるべきであろう。これまでも学校によっては他校の実践のよいところを真似してきたのである。

ただ、学校の多くは閉鎖的で、必要とされる教育改革も「教室のドアの前で止まってしまう」と揶揄される実態が続いてきた。せっかく授業研究にチャレンジしても、スタート段階から自校のみの研究の積み上げを図ることが多かった。そのため授業研究がいつまでも深まらないのである。時間不足の実態の中では効率が悪く、ムダな時間を費やすことになる。オープンで柔軟な考えを持つべきである。

これからの学校は、オープンイノベーション的な発想を必要とすることが多くなる。例えば小学校英語導入やプログラミング教育など、教師にとって慣れない指導への不安が広がっている。そうした課題解決も必要である。

少し話が違うが、文科省は教員の多忙化解消に向けて学校や教委に「業務改善アドバイザー」を派遣する体制を整えようとしているという(本紙1月16日付)。そのアドバイザーには学校マネジメントを専門にしている大学教員が想定されているという。

そのような仕組みが積極的に行われるようになれば、学校にとって新たな課題への取り組みが容易になる可能性がある。その場合、イノベーションの考え方はすべて新しいことを自校で生み出すことではない。また、他から優れた指導方略をすべて借りてくるのではなく、自校の持つ実践や資源を有効に働かせ組み合わせることで「知の相乗効果」をあげることである。積極的に自校の内的な資源を活用することがより豊かに実践できる。学校は自ら改革を志向することが基本である。