【連載】目指せ管理職 選考試験を突破しようⅢ 第36回 新年度に向けて

言動は心に響いたか

〇余裕をもって学習環境の整備に資する

校長は忙しさのあまり、学校運営を見直したり考えたりする余裕が、しばしばなくなる。校長の役割として大事なのは、児童生徒にとって心地よい学習環境の整備である。教職員や児童生徒の間に温かい信頼関係があり、「日々心に響く話が行き交う学校」、そんな学校を築き上げることが求められる。心温まる話や行いが満ちあふれる学校は、児童生徒に、これ以上ない良好な学習環境の整備に資することとなろう。

○時にはゆっくり考える時間を大事にする

校長自身の1年間の言動を思い浮かべよう。教職員や児童生徒にほっと安心感を与えたり、温かく心に響いたりする言葉の投げかけに、心配りがあったか振り返ってみたい。諸注意や指示が必要以上に多くなかったかなども考えよう。校長の言動から醸し出される雰囲気は、学校全体に大きく影響する。豊かな感性を持ちたいものだ。

また教職員とくつろぎながら、児童生徒や教職員、保護者の「心に響く」「ぜひ伝えたい」話などを出し合うのもよい。案外、他から指摘されて気づく場合が多い。「心に響くこと探し」などに時間を費やしたい。それらを共有し、校長が率先するとともに、教職員全員で、ポジティブに、アクティブに指導に生かせたらと思う。校長を中心に学校全体に明るく温かい雰囲気が出てきたら、校長の経営力がすばらしい証である。

○心に響くよい事柄を探そう

実際にあった次のようなことを参考にしてほしい。

▽履き物は揃えるという話(中学校)
修学旅行先のホテルでの話。夜、集会のために部屋に入ろうとしたとき、生徒の履き物が整然と並べられていることに気が付いた。その見事さに感動し、集会の中でそのことについて褒めた。ここまでならよくある話。校長は後日、全校集会で1、2年生に話したそうである。下級生も見習うであろうと期待し、付け加えて部活動のときにもこのようなであったら、きっと成績も上がるであろうとも話した。その後、生徒たちがどう変わったかは想像できる。教職員の「ああしろ、こうしろ」との指導よりも、このような話のほうがずっと生徒の心に届く。 ▽心に焼き付く校長の姿(中学校)

ある時、部室に落書きがされた。教職員だけでなく、生徒たちにとってもショックな出来事である。全校集会で、校長自らがペンキ塗りをして元のようにしたいと話をしたところ、生徒たちから「自分たちにも手伝わせてください」との声が上がり、一緒にペンキ塗りをすることになった。誰が落書きをしたかは分からなかった。だが、それ以後そのような出来事はなくなった。生徒と校長が共に悪戦苦闘する姿は、誰の心にも焼き付く姿である。

▽「仏様の指」という話(大村はま先生の話)
著名な国語教育者である大村はま先生の話。

ある時、先輩の教員が職員室で「仏様の指」という話をした。昔、仏様(お釈迦様)が布教のためにある村を訪れた。その時、ぬかるんだ轍に荷車がはまり、一生懸命引き出そうとしている農夫がいた。仏様はしばらくその様子を見ていたが、荷車はどうしても抜け出せそうにない。仏様は、そっとその荷車に触れた。すると荷車はすうーとぬかるみから出ることができた。農夫は後も振り返らず、そのまま行ってしまった。

その先輩教員は、その話の後で「その農夫が後を見て仏様にお礼を言ったという話でも、それはまた美しく、いい話ではあるが、農夫は自分の力でぬかるみから出られたと思ったほうがどうなんだろう、大村先生」と言われたそうだ。それを聞いた大村先生は思わず顔が赤くなった。それまで大村先生は、自分が自分がという気持ちが強く取り組んできた。それからはできるだけ黒子(陰で)になろうと考えるようになったという。

生徒たちに本当の力をつける意味を知らされた出来事である。