【連載】校長のパフォーマンス 第72回 校長の本領とは何か

教育創造研究センター所長 髙階玲治

 

校長の本領を考える上で極めて示唆のある図書に出会った。本の名もずばり『The Principal』(東洋館出版社、2016)である。

著者のマイケル・フランはトロント大学の名誉教授であるが、日本語に翻訳されることで最初にメッセージが書かれている。

それを読んで私はすぐに、校長の本質が捉えられていると直観した。そこには3つの重要なことが書かれていて、本書の内容を示唆している。

第1は、「リードする学び手たる校長」である。校長は何よりも現在そして将来の学校のリーダーを育てるメンターになる、そしてスタッフと一緒になって共に集団を改善することに力を入れる存在となる。

第2は、「システム・プレイヤー」になることで、自分の仕事はきちんとこなすが、自校以外の多様な対象からも学び、システム化して学校のよりよい成果をあげる。

第3は、「変革をリードしていく」スキルを持てという。変革する優先課題を教師たちと共同して決定し、その力を駆使して未来に向けたマネジメントを実行する。

この3つの視点を読むだけで、校長や学校の本質をついていると感じた。内容も優れていて、「時代遅れの校長像」の章もあるが、何よりも微視的な管理にこだわって悪循環に陥っていないかと警告する。校長は「何でもできる」と思わないことだという。

そのような校長の役割の判断を単なる理念として語るのではなく、エビデンスに基づいて提示する。あるリーダーシップの調査では、「教師の学び及び能力育成をリードすること」が高い結果となっている。そしてリーダーシップを統合する能力として「関連性のある知識を応用する」「複雑な問題を解決する」「信頼関係を築く」の3点を挙げている。

また学校区内部の発展の在り方も参考になるが、「チェンジ・エージェントになる」は、わが国の校長にとってもさらに身近な課題である。例えば、有能なリーダーは「現状維持体質に挑戦する」「複雑なコミュニケーション及び明確な期待の表明を通じて信頼を打ちたてる」など7つの能力をあげているが、どれもが切実な課題である。

実のところ、翻訳書であるから外国の校長像はかなり異なったイメージがあるのではないかと考えるが、違和感はほとんどなく、参考になるヒントが多いのには驚くほどである。何よりも、うらやましいことであるが、多くの調査を活用したエビデンスの確かさにも目を開かされる。理念だけの難解な経営書にはおさらばしたい。

なお、本書の最後で筆者は「未来とは今のこと」としてデジタル革命についても触れている。各国・各地で進行している新たな波をどう乗り切るか、「誰もが無視できない」現実をどう考えるか、難しいことである。