【連載】「ライブとしての授業」を研究する やりがいのある校内研究のススメ 4

京都教育大学教授 榊原禎宏

 

評価フォーマットと活用

これまでの整理から、授業研究を改善するには、授業が再現性の乏しい、ライブ(生き物)として存在することを認めた上で、(a)授業の提供側が操作できる、小さな一部の条件について改変を試みること(b)客観的な把握は難しいという前提で、立場や観点の違いから授業が多様に理解されるのを知り、より幅広い授業理解のできるよう努めること――が重要と導ける。

そこで参考になると思われるのが、ドイツ文部大臣常設会議(KMK)の委託研究として2011年から進められ、今年2月現在、Ver.6・01と版を改めている「エビデンスにもとづく授業診断とその開発方法」である(http://www.unterrichtsdiagnostik.de/)。榊原禎宏・清水久莉子(2014)「授業を観るとはどういうことか」(京都教育大学紀要125号)でも紹介している。

この方法は、次の点で特徴的だ。

(1)授業研究における診断の重要性を示すとともに、授業者は自分の授業を適切には観察できないことを指摘し、同僚や生徒による評価が必要と述べる。

(2)授業を構成する基本的内容として、(1)効率的な授業進行(2)学習を支援する風土と動機づけ(3)明快さと構造性(4)認知的な活動性(5)結果、の5つを設定し、これらに関する27の項目について授業者、観察者、生徒の三方向から評価する。

質問項目は次のようである。

「生徒は授業中いつでも、何をすべきか明確であった」「授業時間のすべてが、学習することに向けられていた」「教員は質問において、生徒に考える時間を十分に与えた」「(説明の際)わかりやすい具体例があった」「生徒は他者の前で発表した」「生徒の学習の前提の違いを踏まえた授業であった」「教育スタンダードを目指した授業であった」

これらは生徒の積極的な活動を重視すると同時に、彼ら/彼女らの違いを踏まえた上で、「教育スタンダード」の目標達成に向けた授業だったかどうかを確かめようとするものである。

各項目は、「そう思わない」から「そう思う」までの4段階で評価され、授業者と観察者、そして授業を受けた生徒の三者間で比較される。

ここで注目すべきは、問われるのは一般的なものでは決してなく、当該の授業についてのみ尋ねることである。日本の学校評価等では「わかりやすい授業がなされているか」などと、いつのどの授業を指すのかわからないものがあるが、ドイツのこの方法はそのまったく反対を志向している。

また立場によって授業の見え方が違うことを踏まえながらも、授業の構成に即して客観的な結果を求める点でも特徴的である。評価結果を確かめ、後日に再び評価することで授業を可視化し、授業者と観察者の対話を通じて診断を継続することが目指されている。

加えて、評価結果の違いを目の当たりにすることで、観察者の授業を見る目の確からしさについて気づかせ、その診断能力の向上を図ることが不可欠と見なしているのである。

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