【連載】教員の多忙を科学的に読み解く 1 科学的に読み解く必要性

(独)教職員支援機構研修特別研究員 神林寿幸

教員の多忙が叫ばれて久しい。戦前の小学校教員も平日1日の労働時間が11時間程度であり(石戸谷哲夫『日本教員史研究』講談社、1958年)、教員のワークライフバランスが課題とされていた(読売新聞1925年12月23日付朝刊)。

これまで教員の多忙の要因として、事務などの教育活動以外の業務に伴う負担が多く指摘されてきた。戦前には学校事務職員が学校に配置されておらず、教員が給与事務等も行っていた。このことが教員の過重負担の原因であるとして、戦後に学校事務職員制度が成立した(清原正義『学校事務職員制度の研
究』学事出版、1997年)。

しかし、同制度成立から半世紀以上が経過した近年でも、事務に伴う教員の多忙を指摘する、OECD第2回国際教員指導環境調査(TALIS2013)などの調査報告は複数存在する。

平成27年12月の中教審による、いわゆる「チーム学校」答申では、教員が担ってきた事務の一部を学校事務職員に移行し、教員の負担軽減と、子供と向き合う時間確保の重要性が唱えられた。

同答申を踏まえ、今年2月には学校事務職員の職務内容の変更等を定めた「義務教育標準法」改正案が提出された。

だが、以上のような教員の多忙の要因に関する指摘は、教育実践からの議論が多く、必ずしも適切な手法によって得られた科学的な根拠に基づくものではない。

例えば、教員の多忙化を検証するためには、調査設計の違いを加味した上で、過去の教員の働き方の実態との比較が必要であるが(青木栄一・神林寿幸「2006年度文部科学省『教員勤務実態調査』以後における教員の労働時間の変容」『東北大学大学院教育学研究科研究年報』62集1号(2013年)、17~44ページ)、こうした分析は皆無に等しい。

もちろん、教育実践からの指摘は重要であるが、これに偏重するなかで、教員の多忙について見落としてきたことがあるかもしれない。

本連載では、データ分析を通じて、教員の多忙を科学的に読み解いていく。

客観的な根拠に基づいた教員の多忙に関する知見を提示し、今後の教員の多忙に関する議論のたたき台となれば幸いである。

(付記=本稿は筆者の個人的見解を記したものであり、所属機関の見解ではない)

◇   ◇

神林寿幸(かんばやし・としゆき)=平成29年3月、東北大学大学院教育学
研究科博士課程修了。博士(教育学)。