【連載】教育の連続性を考える 公立中高一貫校の現場から 第5回 抱えている課題が4つある

教育ライター 佐藤 智

この連載では、公立中高一貫校のメリットを多く伝えてきた。しかし、現場に立つ先生からは「課題」についても挙がる。現場の先生たちとの話で見えてきた、公立中高一貫校が現在抱えている4つの課題について、伝えたい。

1つは生徒募集・生徒の定着の課題だ。公立中高一貫校の倍率は、有名校となれば非常に高い。今年度受検志望倍率は、東京都立両国高校附属中学校や東京都立桜修館中等教育学校では6倍以上となっている。

さも「上位層の生徒すべてが公立中高一貫校に入るのではないか」と思えるかもしれないが、実はそうではない。公立中高一貫校は、平成11年にできた新しい教育制度だ。そのため、地域によっては、「伝統校に子供を入れたい」という保護者の意向は根強いという。

つまり、公立中高一貫校に上位層の子供が一極集中するという構図にはなっていない。

さらにいうと、公立中高一貫校の附属中学校に入りながら、高校進学段階で伝統校に移るというケースもある。

堅調な公立中高一貫校がある一方で、生徒募集や、6年間で指導メリットを保護者に実感してもらうための努力をしている学校もあるのが現状だ。

2つ目は、環境に適応できない生徒のケアの難しさだ。小学校教員の話では、小学校で集団になじめなかった子が、一般中学校からの「逃げ場」として公立中高一貫校を受検するケースがあるという。

近年では、合格後に、公立中高一貫校側から小学校に子供の申し送り事項を求め、6年間という長い期間を過ごす学校に、早期に適応させるよう努めているところもあるようだ。

3つ目は、教師の異動の問題だ。公立学校の教師は10年弱のスパンで異動する場合が多い。公立中高一貫校であれば、6年間持ち上がり、異動となるケースがあるが、学年一巡だけでは、課題意識を持ち、学校指導体制をブラッシュアップしていきにくい。

最後は、中学校教員と高校教員の考え方の差だ。公立中高一貫校の評価軸の1つとして、大学進学実績がある。高校の教師の多くはその責務を理解しているが、中学校の教師にとっては馴染みのない概念だ。

生徒指導や学級経営などで優れた指導力を持つ中学校教師と、進路指導や大学入試を意識した教科指導の腕を持つ高校教師が一つの学校でどうタッグを組むか、公立中高一貫校の管理職は思案している。