【連載】教員の多忙を科学的に読み解く 4 教育活動時間は過去と有意差

(独)教職員支援機構研修特別研究員 神林寿幸

1950~60年代の教員との比較から、2000年代後半以降、近年の日本の教員の多忙を読み解く。以下の記述は、拙稿「課外活動の量的拡大にみる教員の多忙化」(『教育学研究』82巻1号、2015年、25~35ページ)に基づくものであり、あわせて参考にされたい。

分析には1950~60年代に実施された10調査、2000年代後半以降に実施された4調査の合計14調査・210の集計結果を使用する。

これらの集計結果をもとに、全体の労働時間と、これを構成する教育活動時間、授業準備・成績処理時間、学校運営に関する業務時間(事務処理、会議、研修など)、外部対応時間を比較する(いずれも週あたり)。

まず全体の労働時間は、1950~60年代調査のほとんどは60時間未満であったが、2000年代後半調査のほとんどが60時間以上であった。調査設計や調査対象の性別・年齢等の条件を統制した統計的分析による比較でも、1950~60年代に比べて、2000年代後半以降の教員の全体の労働時間は長かった。

次に、具体的な業務時間について結果を記す。1950~60年代の教員と比べて、2000年代後半以降の教員で業務時間が長いのは、教育活動に費やす時間であった。1950~60年代調査で、教育活動時間はおおむね30時間以下であったが、2000年代後半以降調査では30時間以上を示す結果が多かった。統計的検定でも1950~60年代と2000年代後半以降との間に、教育活動時間に有意差が確認された。

教育活動以外の授業準備・成績処理、学校運営に関する業務、外部対応については、1950~60年代と2000年代後半以降との間で、いずれも5%水準で統計的検定による有意差は確認されなかった。授業準備・成績処理は、両年代ともにおおむね12~15時間であった。学校運営に関する業務については、1950~60年代調査の多くが小学校で10~15時間、中学校で15~20時間であった。他方で、2000年代後半以降調査の多くは小学校で8~10時間、中学校で10時間前後であった。外部対応は両年代ともおおむね1時間前後であった。

以上から、教員の多忙化の背景には、社会の変化に応じて学校教育の役割が拡大したことが推察される。「今日の学校に求められる教育は何か」という社会的議論を通じて学校教育の内容を精選するのが、最大の業務改善になるであろう。

[付記]本稿は筆者の個人的見解を記したものであり、所属機関の見解ではない。

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