【連載】対話 そして 未来へ SCとして子供と寄り添う 2 困った子供は困っている子

大阪教育大学教授 家近早苗

教師や保護者などの援助者が子供のことで困っているときは、実は子供自身がとても困っています。また教師が理解しにくいとか指導の仕方がわからないと思っている子供は、教師を理解しにくいと感じている子供でもあります。

◆宿題忘れ

Aくんは勉強がよくできますし、授業中の発言も積極的にする子ですが、よく宿題を忘れます。担任教師は、Aくんがなぜ宿題を忘れるのかを理解できずに困っていました。

「宿題忘れ」は、よく使われる言葉ですが、実は、たくさんの意味や状況を含みます。「宿題忘れ」は宿題を提出しない状態を示していますが、その理由は「宿題をやってこない」「宿題をやったけど家においてきた」「提出するのを忘れた」「宿題が難しくてできなかった」「宿題があるのを忘れていた」などさまざまです。

Aくんは、算数のプリントはあっという間に終わらせてしまい、すべて正答しますが、漢字書き取りのドリルになると、なかなかとりかからず、だんだんと不機嫌になります。書き始めても、1つの漢字を書くのにとても時間がかかります。漢字はしっかりと覚えているので、なぜ書かなければいけないのかもわからず、A君にとって宿題を終わらせるのはとても大変なことでした。

◆上手に表現できない

Bくんは、自分の気持ちを上手に伝えるのが苦手です。ドッジボールをしている友達と一緒に遊びたいと思っているのに、「仲間に入れて」と言えません。ボールが自分の方に転がってくると、わざと遠くに放り投げたりするので、先生から注意されることがありました。友達もなんとなくBくんを避けるようになり、それを感じたBくんは、さらに友達が嫌がることをするようになりました。

そしてますます先生から叱られ、Bくんは「誰も自分をわかってくれない」と言い出すようになりました。

◆困まり感を見つける

教師が、困った子供だと思っていると、その行動を何とかよくしたいと思うので、子供を注意する機会が多くなります。そうして、注意される子供との関係がうまく取れなくなる場合があります。このようなとき、子供も困っているのではないかととらえると、指導の仕方や子供への接し方が変わります。教師がいろいろな場面を使って一人ひとりの子供の困り感を見つけることは、子供にとっても教師にとっても良い関係づくりや効果的な援助につながるのではないでしょうか。

※本稿は「日本教育」(日本教育会刊)平成27年8月号「子どもの心」をもとにしています。