【連載】教員の多忙を科学的に読み解く 5 単位時間あたり労働負荷分析

(独)教職員支援機構研修特別研究員 神林寿幸

これまでも、教員にとって負担感の大きい業務は何かについて、数多くの調査がされてきた。しかし、これらの調査で示された負担感の大きい業務とは、教員の主観的判断に基づくものである。そのため、意識レベルで負担を感じないが、実際には教員に負担感をもたらす業務があった場合、従来の調査では、こうした業務は何かを特定できない。そこで、公立小・中学校の学級担任を受け持つ教諭が行う20業務について、「その業務を1時間行った場合、どれほど負担感を強めるのか」という単位時間あたりの労働負荷を算定してみる。

その上で20業務の労働負荷を比較し、教員の負担感をもたらしやすい業務を明らかにする。分析には平成18年度文部科学省「教員勤務実態調査」の第5期(11月実施)データを用いる。

まず小学校教諭について、負担感と統計的に有意な関連が確認され、かつ単位時間あたりの労働負荷が大きかったのは、順に「学校行事」(準備も含む)、「学年・学級経営」(連絡帳への記入など学級運営に関する業務等)であった。

次に中学校教諭では、「保護者・PTA対応」、「学習指導」(放課後の補習)、「生徒指導(個別)」(進路指導、課題を抱える生徒への指導等)、「会議(校外)」、「学校経営」(校務分掌)、「授業」、「学校行事」、「生徒指導(集団)」(清掃・登下校指導等)、「事務・報告書作成」、「成績処理」、「授業準備」、「学年・学級経営」の順に、単位時間あたりの労働負荷が大きかった(いずれも負担感と統計的に有意な関連がある)。

従来の教員の負担感軽減策の提言の多くは、報告文書の簡素化等、教育活動以外の業務に関するものである。ただ今回の分析から、小学校では学校行事、中学校では補習指導や生徒指導といった教育活動自体も教員に強い負担感をもたらしやすいことが示された。

特別支援教育の推進や外国人児童生徒の増加等、多様化する児童生徒のニーズへの対応が学校に要求される中で、教育活動に伴う教員の負担についても、今後議論する必要性がうかがえる。

[付記]本稿は筆者の個人的見解を記したものであり、所属機関の見解ではない。また本稿の分析結果は、拙稿「周辺的職務が公立小・中学校教諭の多忙感・負担感に与える影響」(『日本教育経営学会紀要』57号、2015年、79~93ページ)に基づくものである。

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