【連載】教員の多忙を科学的に読み解く 6 社会環境の変化と精神疾患休職

(独)教職員支援機構研修特別研究員 神林寿幸

文部科学省は毎年、公立学校教職員の人事行政状況調査で、都道府県ごとの精神疾患による病気休職数を公表してきた。

この精神疾患による病気休職者数と、同省の学校基本調査(各年版)を併用することで、各都道府県の精神疾患による病気休職発生率を算出できる。

これまでも都道府県ごとの精神疾患による病気休職発生率(以下、発生率)に着目して、学校教育を取り巻く環境と教員のメンタルヘルスとの関連が検証されてきた(例:高木亮「都道府県ごとの教師の精神疾患を原因とした病気休職『発生率』のデータ報告」『中国学園紀要』第8号、2009年、109~115ページ)。

しかし先行研究は、2000年代後半以降の分析にとどまっている。

そこで分析対象年度を拡大し、経年データの分析から、改めて発生率増大の背景を明らかにする。

学校教育を取り巻く環境に関する要因には、政府統計を用いて得られた、財政力指数と初等中等・特別支援教育費割合(いずれも都道府県財政)、公立学校非正規教員比率、日本教職員組合組織率、公立学校教員1人あたりの児童生徒数、公立小・中学校不登校による長期欠席発生率、公立小・中学校特別支援学級在籍率、少年刑法犯検挙人員、父子核家族世帯割合と母子核家族世帯割合(いずれも18歳未満の構成員がいる世帯)、生活保護被教育扶助人員(月平均人口千人あたり)の11変数を使用した。

分析対象年度は、以上の指標がすべて得られた1980~2012年度とする。

分析の結果、財政力指数、初等中等・特別支援教育費割合、父子核家族世帯割合、生活保護被教育扶助人員以外の7つの要因と発生率との間に、有意な関連が確認された。

特に不登校による長期欠席発生率や、特別支援学級在籍率の増大、母子家庭という教育的配慮が必要な児童生徒が増加している都道府県ほど、発生率もまた、増大していたことが注目される。

児童生徒やその保護者のニーズが多様化し、学校教育が拡大する中で、教員の心理的負担が増大していることが改めてうかがえる。

[付記]本稿は筆者の個人的見解を記したものであり、所属機関の見解ではない。なお本稿は、筆者が今年1月に東北大学に提出した博士論文『公立小中学校教員業務負担の規定要因』(第2章)に基づくものである。