【連載】教員の多忙を科学的に読み解く 7 「子供と向き合うこと」の変容

eye-catch_1024-768_kanbayashi(独)教職員支援機構研修特別研究員 神林寿幸

これまで第2~6回にかけて、教員の勤務実態に関する比較分析(他職比較、時点間比較、国際比較)、さらには単位時間あたりの労働負荷や学校教育をとりまく環境の変化に着目して、教員の多忙の背景を探るための分析を行ってきた。

一連の分析から、教員の本務である教育活動自体の負担が、時間的にも教員の心理的にも増大し、教育活動自体が今日の教員の多忙を引き起こす要因であると結論づけられる。

これまで教員の多忙解消策の多くは、校務分掌や事務処理といった、教育活動以外の業務に焦点を当ててきた。こうした方策の効果が皆無であるとはいえないが、従前の取り組みでは抜本的な教員の多忙解消にならないと考えられる。

これまで学校教育への期待は増大してきた。不登校児童生徒が増大した背景の一つには、不登校の定義拡大がある(加藤美帆『不登校のポリティクス』2012年、勁草書房)。同様のことは、特殊教育から特別支援教育への転換、いじめ対策などにもうかがえる。加えて、今日の学校には、貧困対策のプラットフォームとしての役割も期待されている。

社会の変化によって生じた児童生徒をめぐる諸課題への対応が学校教育に要求され、教員が行う教育活動(生徒指導など)時間が増大し、今日の教員の長時間労働がある。

さらに、課題をかかえ教育上の配慮が必要な児童生徒への指導は、教員にとって心理的負担が大きい。教員養成の中核は教科教育や教授法の習得にある。そのため、若手教員の多くは、発達障害など教育的配慮が求められる児童生徒への指導法について、十分な知識や技量がないままに、指導が求められる。

近年、教員の大量退職に伴い、若手教員が増大する中で、こうした事態が起こる可能性は一層増大すると思われる。

今後、教員の多忙解消に向けて、「子供と向き合うこと」自体も、今日の教員の多忙を引き起こす要因であることを意識する必要がある。

学校や教員の役割とは何かを再考し、現状に見合った学校を模索・構築すること、養成や研修で、教育的配慮が必要な児童生徒に対する教員の指導力を向上させる機会を増やすことが重要になろう。

教員の多忙解消には、教員の行うべき教育活動の範囲を見直しつつ、教育活動に伴う教員の不安を軽減していくのが求められる。(おわり)

[付記]本稿は筆者の個人的見解を記したものであり、所属機関の見解ではない。