大阪教育大学教授 家近早苗
子供への支援は、子供の健康な部分や強いところを見つけながら行います。これを自助資源といいます。また、子供を助けてくれる援助者は援助資源(石隈利紀著『学校心理学―教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助サービス』誠信書房)といわれ、子供にとっての大きな支えとなります。
◆分かりたい・勉強したいという気持ちは強い味方
どの子も皆、勉強したい、分かるようになりたいという気持ちを持っています。
不登校の子供への支援をするときに大切なのが、学力、体力と規則的な生活を維持することです。緊張が強く教室に行きにくいAくんは数学が好きですし、Bさんは歴史が好きです。2人とも相談室での学習は楽しいようです。このような学習を通して子供と関係を作り、子供の状態や気持ちを把握することは、学校だからできるスクールカウンセリングでもあります。
そしてこの勉強したいという気持ちは子供の自助資源であり、子供の強さを引き出すことにつながります。
◆子供が成長したいと思っていることを見つける
小学生の担任教師から、友達に暴力を振るう子がいて困っていると相談を受けました。Cくんと話をすると、これからはお友達には手を出さないと言いました。しかしCくんは、また友達とけんかをしてしまいました。そのとき、Cくんは友達ではなく壁を殴りました。その話を聞いた私は、担任に「よくやった」とほめてくださいと伝えました。壁を殴ったCくんは、自分の言ったことを守り、自分の行動を自分で変えたのです。このような小さな変化は、実は大きな変化なのですが、できて当たり前という目で見ていると、見つけられません。
◆援助者の役割を生かす
中学生のD子さんは、入学してから欠席が続き、担任や相談員、スクールカウンセラーとも会いませんでした。このようなとき、家族からの情報はとても重要です。学校からのプリントに目を通す、教科書を見る、担任から電話がかかったときの表情など、保護者にしか分からない情報を基に支援を行うからです。
保護者の情報からD子さんは、英語に関心を持っているのが分かりました。相談員が「英語を教えるよ」と声をかけると、D子さんは相談員と勉強を始めました。これをきっかけに、担任教師にも会うようになり、登校できるようになりました。
子供自身が持つ力と援助者の力は、子供が元気でいるための大切な資源なのです。