学習する組織 コーチングで変革へ(3)教育現場に今何が必要なのか

eye-catch_1024-768_honma京都造形芸術大学 副学長 本間正人


「教育」と「学習」は、一般的には混用されている場合が多いが、実は正反対の方向性を持った行為であると考えられる。すなわち、教育の中で中核を占めるのはTeachingであり、これは「個人の外側から内側への働き掛け」である。他方、学習の中心はLearningであり、「個人の内側から外側への働き掛け」であるといえる。これを示したのが下図である。

0821本間・図そして、Coaching(コーチング)とは、学習者の主体的な学びを側面的にサポートし、このベクトルを、幅広く、長く、力強くしていくこと。時には、多少の方向修正を行う場合もあり得るが、あくまでも学習者が本来持っているアクティブ・ラーニングの力を生かし、伸ばしていくことが基本だ。

従来の教育学的な発想では、学習者の個性やニーズとはおかまいなしに、外側から「勉強せよ」という圧力が加えられた。この外圧が強すぎることで、かえって内側からの自発的な学ぶ意欲が削がれるケースが少なからず存在したのではないだろうか。

学校現場で、ある程度のティーチングは必要だろうが、Eラーニングが発展する時代にあって、個別にフィードバックを行い、意欲を引き出すコーチングを行う力量の重要性が、加速度的に高まっている。
ベストセラーとなった書籍『ビリギャル』、そして大ヒットした同名の映画は、高校教師から「人間のクズ」と呼ばれた小林さやかさんが、慶應義塾大学に合格するまでの実話を基にしたもの。この中で指導者・坪田信貴氏は、ほとんどティーチングをしていない。さやかさんの可能性を信じ、学習目標を明確化し、学習方法を紹介し、励まし、やる気を高め、時には必要な軌道修正や気分転換をサポートしていた。まさに「名コーチ」として指導に当たったのだ。

個別指導塾と学校との違いはあるが、「通信制高等学校」では、Eラーニングとコーチングの組み合わせが指導の中心に置かれ、中でも「N高」は、2017年度までに4千人の在籍者を数えている。ひょっとすると、普通の学校のほうが時代の流れから取り残されているのかもしれない。

どんな学校でも、入学時点での学力のばらつきが拡大しており、「教室での一斉授業」の効果は年々、低下している。今後、一般の学校でもこれまで以上に、個別指導に力を入れていく必要があるだろう。