未来を切り開く教育政策(1)英語教育は本当に必要か

eye-catch_1024-768_t_suzuki_r城西国際大学大学院教授
厚生労働省総合政策参与
鈴木崇弘

小学校では、平成20年度から、5・6年生を対象に外国語活動として英語教育が始まった。23年度には「小学校5年生から」必修となり、小学校での英語教育は浸透してきたといわれる。

次期学習指導要領では、グローバル化への対応を充実させるために、英語に親しむ小学校5・6年生の外国語活動を3・4年生に前倒しするとともに、5・6年生は教科に格上げし、各校の判断で30年度からの先行実施も認めている。

これは一見すると、正しい判断のようにみえる。だが、人工知能研究の第一人者である松尾豊東京大学特任准教授によれば、37(2025)年頃にはAI・コンピュータが、きちんと意味を理解する形で、自動での通訳や翻訳ができるようになるという。そうだとすると、そのときには、もはや英語や外国語を勉強する必要がなくなる可能性がある。

もちろん、現時点では、そのことが現実に起きるかどうかは不確定な面もあるわけで、英語・外国語を通じて、外国の文化や歴史を学ぶ側面もあるので、外国語を学ぶこと自体を否定するつもりはない。

そのような状況が生まれた場合(松尾特任准教授はそれを「アフター自動翻訳」と呼ぶ)、人や企業などは、言語的な障壁が現在より格段に下がり、国内外の出入りは極端に簡単になり、真の意味でのグローバル化が起きることが予想できる。

また学校において、外国語、特に英語を学ぶかなりの時間が不要となり、教える人材もほとんど必要なくなる可能性がある。その代わり、海外で学ぶなどの機会を増やせるだろう。

このように考えていくと、次期学習指導要領は、AIなどの今後の流れの方向性に、必ずしも即しているとは考えられず、子供たちから必要なことを学ぶ機会や時間を奪うとともに、今後必ずしも生かされることのない教育スキルや教育人材を生み出してしまう危険性もある。それは、子供や教育界だけでなく、社会全体にとって大きな損失であろう。

狭い意味での教育や、従来の教育政策の延長の視点からだけではなく、社会全体や新しい技術革新の流れなど、より多面的で中長期的観点も踏まえて、今後の教育政策を考えていく必要があるだろう。

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城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科教授・厚生労働省総合政策参与・PHP総研主席研究員・日本政策学校代表