学習する組織 コーチングで変革へ (5)最重要のスキルは「傾聴」

eye-catch_1024-768_honma京都造形芸術大学 副学長 本間正人


多くのコーチングの本が「傾聴のスキル」を最重要としており、私もその考え方に賛成だ。コミュニケーションといえば「話す側」にスポットライトが当たる印象だが、話を引き出す役割は「聴く側」に大きい。

話をするときには、自分のペースでできる。だが話を聴く際は、相手のリズムに合わせる必要が生じる。自分の「我」を脇に置き、相手を受容する心の余裕が求められるのだ。従って、聴く力は人間力のバロメーターといえる。「聴く力の低い人格者」は考えにくいのではなかろうか。

こうした内面的な徳の高さは「非言語コミュニケーション」に表れる。顔が無表情・無反応だったり、斜に構えた姿勢だったりでは、話者が「聴いてもらっている」という手応えを感じられない。話す人にしっかり向き合い、相手のリズムに合わせて「あいづち、うなずき、くりかえし」を意識するのが大切だ。

一生懸命に聴く姿勢を持っていても、教師の中には、つい「間違い探し」の罠にはまる人が少なくない。もちろん不的確な表現や行動、不正確な認識の修正が必要な場合もあるが、コーチングの際にはまず「否定しないで最後まで共感的に聴く」のを忘れないでほしい。

特に児童生徒が悩み事を打ち明けているような際に、「そんなことで悩むな」「君はこうすべきだ」などと話の腰を折ってしまうと、教師は信頼を失ってしまう。「どうせこの先生に話したって分かってもらえない」と感じてしまえば、その後の指導にも好ましくない影響が出るだろう。

教師の立場から首をかしげるような発言も、まずいったんは「なるほど、そう感じたんだね」「君はそう思ったんだ」などと「否定しないで受けとめる」のが大切だ。

ただし、これは「全面的に肯定して受け入れる」とは異なるので注意してほしい。そして、正すべき点があったときには、「一つアドバイスしたい」「僕の意見を言ってもよいかな」と、「許可どりの質問」を挟んでから提案するのを勧めたい。相手が頭の中で「キャッチャーミットを構える余裕」を作ってからでないと、せっかくの提案も受けとめてもらえないからだ。

逆に頭ごなしに「それは駄目だ」「間違っている」などと断定してしまうと言動や行動だけでなく、人格そのものが否定されたと感じてしまう。教師に話をしっかりと聴いてもらった体験が子供の自己肯定感の向上に寄与する。子供の声と心にしっかりと耳を傾けることこそが、信頼関係構築のカギであり、あらゆる教育的指導の基礎となる。