未来を切り開く教育政策(3)ジョブ・ディスクリプション

eye-catch_1024-768_t_suzuki_r城西国際大学大学院教授
厚生労働省総合政策参与
鈴木崇弘

「大学教育が仕事に役立たない」とよく言われる。確かに一面では事実だろう。だが私自身、大学で教鞭を執る立場から考えると、大学教育を変えれば対応できるものではないと思う。

理系のように、大学(正確には教員の研究室)と企業に深い関係がある場合は別だが、それ以外は、大卒者は総合職などで仕事を探すことになる。職種で人材を応募する場合もあるが、日本の企業等では、大学の新卒を一括採用し、組織内で研修を行い、適性を見ながら、人材育成と人材配置を行っている。

その採用の際に必要とされるスキル・知見や能力は、一般的なものは別としても、職種に応じた表記はほとんどない。

これは実は、日本の終身雇用制の慣習と密接に結び付いていると考えられる。つまり、雇用する企業・組織からすれば、終身雇用的視点から、また企業等の組織の中で、最も適した人材を配置できるようにしたい。そのために、採用時の対象人材は、特定の専門性やスキルなどよりも、基礎的な能力、いわゆる地頭のいい人材を採用し、採用後に組織内で独自に研修や教育をして活用するというように、自己完結的に人材を育て、活用していくことになる。その結果、採用人材に求められるスキル・知見等は一般的なものになり、職種ごとに必要とされるものは明記されず、大学が教育すべき焦点が定まらないのだ。

つまり、日本の新卒採用では「従業員の職務内容に関する責任や権限、職務の難易度、必要な能力や資格、経験年数等の詳細を個別に定義し、書面化した『ジョブ・デスクリプション』」(job description=職務記述書)(出典=人材マネジメント用語集)が存在しないのだ。

それがないため、企業はこれまで人事を自由に、かつ柔軟に行えた。しかし、日本企業などもグローバル経済の中で厳しい状況にあり、また社会のニーズや状況が短期間で大きく変わる中、内部で時間をかけて人材を育成しながら人事を行えない状態になってきている。

そこでは、仕事に応じて必要とされるスキルや知見を、大学教育などを通じてすでに有していて、できる限り即戦力となれる人材が必要となる。

そのために企業等は、自社が必要とする職種の人材のジョブ・デスクリプションをできるだけ明確にする必要がある。またそれに対して、人材を送り出す大学等の教育機関は、そのジョブ・デスクリプションを踏まえてカリキュラムを作り、学生に必要とされるスキル・知見を習得させるようになるだろう。

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