学習する組織 コーチングで変革へ(6)コーチングのスキル「質問」

eye-catch_1024-768_honma京都造形芸術大学 副学長 本間正人


コーチング関連書籍の多くのページが「質問のスキル」に割かれている。それは、具体的な質問文の例が、文字で説明・紹介しやすいからだ。この連載では紙幅が限られるので、基本的な考えを3点挙げたい。

第一に「相手の立場に立って答えやすい質問から始める」。誰しも自覚的に意識しないと、自分が尋ねやすい質問から会話をスタートする傾向がある。「調子はどうだ?」といった漠然としたものだったり、「国語のテスト、できたか?」と相手にとって一番、触れてほしくない急所をえぐる質問を発して、会話を凍らせてしまったりした経験はないだろうか。

信頼関係をベースに、いきいきとしたコミュニケーションの量を増やすためには、その子にとって「答えやすい質問」から会話をスタートしたい。ただし、「何が答えやすいか」は一人一人異なるので、個々人の興味関心、得意不得意をきちんと把握しておくことが大切なのだ。

第二に「黙らせる詰問ではなく、意見や考えを引き出す質問を発する」。「何回言ったら分かるんだ」「なんでそんなことをしたんだ」という反語表現は、自分が相手に対して抱いている期待が裏切られたとき、心理的に「仕返し」する怒りの感情をはらんでいる。深く息を吐き、怒気を脇に置いてから、「まず、何が起こったか説明してくれないか」「君がその行動をとった理由をリストアップしてほしい」などと、冷静に質問する技は、ぜひ多くの教師に学んでほしい。

また「元気を出せ」「頑張れ」と命令するよりも、「一番、頑張った話を聴かせてね」とスポーツの「ヒーローインタビュー」のように、過去の体験を想起させる質問を行うと、子供の元気を引き出すことができるので、活用したい。

「考える力」の向上が教育機関の目標に掲げられている今日、教師が物事を説明する前に、「君はどう思う?」「みんなの意見は賛成かな、反対かな?」などと質問することで、少しでも自分で思考する時間を提供する工夫も必要だ。「知識の詰め込み」と批判されるパターンでは、授業中に、児童生徒に対しての問いかけが極めて少ない傾向がある。

第三に「質問のレパートリーを増やす」。日本の学校教育には、コミュニケーションそのものを学ぶ機会や、質問の幅を増やすチャンスが乏しいので、現場の教師は、自ら本を読んだり、研修・講座に参加したりすることで、質問力の向上を図る必要がある。

(一社)しつもん財団の松田充弘代表理事は自らを「質問家」と定義し、学校で「魔法の質問」の授業の普及を図っている。教室で、即、使える質問の数々を短時間で効果的に学べるので、導入を勧めたい。