学習する組織 コーチングで変革へ(7)ほめると叱るで承認スキル

eye-catch_1024-768_honma京都造形芸術大学 副学長 本間正人


私は「ほめる」と「叱る」の2つを合わせて「承認のスキル」と呼んでいる。こうした分類方法は書籍によって異なる。ただし、子供たちの強みや可能性を引き出し、伸ばすために、この2つの要素が必要なのは間違いない。

ほめ上手のベースは「観察力」と「表現力」で、この間には相関関係がある。

じっくり児童生徒を見ると、ついその子の欠点に目が向いてしまう傾向が見受けられる。大人であり教師である自分からみれば、子供の至らざる点が目につきやすいのは無理もない。しかし、弱点を矯正・補強することより、「美点凝視」によって、一人一人の子供の「すぐれているところ、伸びたところ、がんばったところ」を探し出そうとして目を凝らすことが、学習力を引き出すカギになる。他方、教師が子供の欠点をあげつらったことが、他の子供がその子をいじめるきっかけになったというケースもある。

そして、表現力の中核には、語彙力が存在する。「ほめ言葉のシャワー」の実践を全国に広めている菊池省三先生は「価値語」を使うのを推奨している。子供たちの行動や考え方で、「望ましいこと、素晴らしい部分」を言い表すボキャブラリーをリスト化したものだ。「潔い」「一人が美しい」「人の心を開く鍵」などの言葉は耳にするだけで晴れ晴れとした気持ちになる。そして、使える語彙力(アクティブボキャブラリー)が豊かになると、認識の受け皿が増えて、観察力も向上するのだ。

最後に「怒る」と「叱る」の違いについて言及したい。「怒る」とは、相手を否定する「感情的な反応」であるのに対し、「叱る」とは「しかるべきビジョン」を示す、あるいは、質問で引き出す「理性的な対応」であると定義している。

教師の「アンガーマネジメント」が不十分だと、子供たちは怒りの感情をダイレクトにぶつけられる。自己肯定感が低く萎縮した子は、親や教師の怒気を受け続ける環境に置かれていたという場合が多い。

目の前で緊急事態が発生している場合には「やめろ」「止まれ」などと望ましい行動を端的に示す必要がある。このような場合「何でそんなことしているんだ」という「詰問=反語」は判断を混乱させ、効果的ではない。

そこまで緊急を要しないときには、息を吐いて冷静さを確保した上で、「どうしたら良いと思う?」「君が実現したいことは何かな?」と未来志向で「あるべき姿」がイメージできるように考えさせるのが、コーチングのアプローチだ。

子供たち一人一人の可能性を信じ、良いところを認め、引き出し、伸ばしていくためには、体系的な学習が必要だ。学校が「学習する組織」へと進化していくためにも、まずは一人一人の教師自身が、できるところから行動に移していっていただけるのを願っている。 (おわり)

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