未来を切り開く教育政策(8)若い世代は内向き志向なのか?

eye-catch_1024-768_t_suzuki_r城西国際大学大学院教授
厚生労働省総合政策参与
鈴木崇弘

日本人学生が内向き志向で、海外留学等を希望しないといわれて久しい。だがそれは正しい理解ではないようだ。

就職時期の早期化や海外旅行の容易化で海外の魅力等が低下する中、留学以外にも学内外で活動等を行う学生が増えて、時間・コストの必要な留学が、さまざまな他選択肢との比較で、優先順位を低下させているようだ。

だが、日本学生支援機構の「協定等に基づく日本人学生留学生調査」(平成16年度以降)や、「協定等に基づかない日本人学生留学生状況」(21年度以降)の調査によれば、総数では21年度の3万6302人から27年度の8万4456人に増加してきている。留学先はアメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスの英語圏を中心に、次いで韓国、中国、ドイツが多く、その割合は大きく変化していない。

それよりも、それ以外の留学先国を示す「その他」が、21年度の25.2%から36.3%と急激に増加し、留学先が分散化しているのが重要だ。

ただ問題は、留学期間は、1カ月以内が21年の46.5%から60.7%と増大しているのに比べて、より長期間の留学は軒並み、割合を減少させている。そのことが、先述の学生の置かれた現状に影響されているのであり、結果として現在の学生は内向き志向だという印象が社会的に持たれてしまっている一因ではないかと思う。

このような社会印象などを背景に、世界を知ると同時に、日本を知る機会を提供する目的で、日本人の若い世代を海外に派遣する海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」が、官民協働で26年に開始された。

このプログラムは、支援金額を24年度の31億円から28年の68億円と2.2倍、支援対象学生数は9千から2.3万人の2.7倍に拡大。対象の高・大学生は、プログラムの応募者も合格者も飛躍的に拡大している。知り合いの大学生らに話を聞くと、海外留学への関心や前向きさ、積極性を高めるインテンシブになっており、その政策成果は上がっているようだ。

本プログラムの担当は、文部科学省官民協働海外留学創出プロジェクトディレクターの船橋力氏だ。同氏は、企業と学校向けの体験型・参加型の教育プログラムを提供する(株)ウィル・シードを起業、成功させた民間人で、民間でのこれまでの知見や経験を生かして、本プロジェクトをリードしてきており、その成果が表れているようだ。

だが留学は、筆者の経験からも、ある程度長期でないと大きな意味がない。今後は、留学がより長期なものになる政策的工夫が必要だろう。