未来を切り開く教育政策(10)教育にも政策実験を

eye-catch_1024-768_t_suzuki_r城西国際大学大学院教授
厚生労働省総合政策参与
鈴木崇弘

皆さんは、「政策実験」という言葉を聞いたことがあるだろうか。一般的に政策は、その施行前に事前の試みや成果評価はできず、再現性がないといわれてきた。

ところが近年、「行動経済学・実験経済学」という考えが広まった。そのうち、特に社会的で政策に関わるものが、まさに「政策実験」となるのだ。

「行動経済学」とは、必ずしも合理的に行動しない人間の経済行動や、社会的な現象を観察し、経済学に人間の心理を組み込むことで、実証的に捉えていくもので、経済実験やアンケート調査などを駆使して実施される。

「実験経済学」は、「行動経済学」にも関わる。伝統的な経済学は、一般的な実験と異なって再現性がないが、実際の人間を被験者として、条件を変更してそれを評価する経済学を「実験経済学」という。例えば、オークションや競争入札で、入札数、参加条件、談合の有無などの条件を変えて、落札価格への影響を評価研究することが、これに当たる。

以前に、気鋭の経済学者を顕彰する第3回円城寺次郎記念賞を受賞した、田中知美アリゾナ州立大助教授(当時)の受賞記念講演を聞く機会があった。同氏は、行動経済学・実験経済学を生かすことで、貯蓄意欲を高め、ホームレスから脱却させる政策実験の実施などで同賞を受賞した。

同氏は、「政策実験のように、自分で実験をしてデータを集めるのは、これまでの経済学とは全く異なる」が、「実証から理論にフィードバックすることが重要である」とし、「政策をデザインしてテストし、政策が有効かどうかを試せる政策実験に取り組んで」おり、「途上国では、予算が限られているので、この1、2年、行動経済学に注目が集まっている」と指摘した。

日本も、財政的な制約性が高まっており、政策の失敗はますます許されなくなってきている。

特に教育政策の場合、その結果や成果には時間がかかり、かつまた、その影響は社会的に大きい。その意味で、政策における有効性や確実性の向上を図っていくことは必要であり、時代の要請でもあろう。

教育の場合は、これまでも教育系の大学や学部の付属校等で教育に関するさまざまな研究は行われてきたが、政策的にはそれだけでは不十分だ。

以上のことからも、行動経済学・実験経済学に基づく政策実験を実践し、その成果の評価に基づいて、教育における政策を執行・実施していくことが、今後は必要だろう。(おわり)