LGBTの児童生徒の学校生活~教員に求められる理解(5)自傷行為・自殺念慮・自殺未遂経験

eye-catch_1024-768_hidaka宝塚大学看護学部教授 日高 庸晴

いかなる形であれ児童生徒が命を落としてしまうことは、学校現場であってはならないことだ。しかし学齢期初期から蓄積されるいじめ被害経験やLGBTといった多様性に関する肯定的な情報提供の圧倒的な欠如、否定的な情報やからかいにより、自己肯定感や自尊感情を育むのを阻害されてしまう現状がある。それらに起因して自ら命を絶ってしまうということが、変わらず繰り返されている。

10代のLGBTにおける刃物で自分の身体を傷つけた」といった自傷行為経験率は15.3~50.0%であり、首都圏男子中高生の7.5%※と比較しても、自傷行為経験率は2~7倍以上と極めて高率であることが国内研究で示されている。

p20171004LGBT表加えて、ゲイ・バイセクシュアル男性の65%に自殺念慮、15%に自殺未遂経験があり、異性愛男性に比較すると5.98倍、自殺未遂リスクが高いこと、性的指向を誰にもカミングアウトしていない者に比して、6人以上にカミングアウトしていると、自殺未遂リスクは3倍に跳ね上がることも分かっている。

トランスジェンダーの自殺未遂関連行動については、自殺念慮経験率62.0%(男性から女性で71.2%、女性から男性で57.1%)、自殺未遂率10.8%(男性から女性では14.0%、女性から男性では9.1%)と臨床現場から報告されている(針間克己・石丸径一郎『性同一性障害と自殺』平成22年、精神科治療学25)。

平成29年に2度目の見直しがされた国の自殺対策総合大綱に、「性的指向や性同一性障害に関する嫌がらせ等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な処置を講じる(法務省)」ことや、「社会や地域の無理解や偏見等の社会的要因によって自殺念慮を抱えることもあることから、性的マイノリティに対する教職員の理解を促進するとともに学校における適切な教育相談の実施等を促す(文科省)」とはっきり明記された。

生徒を自殺で亡くした校長先生が「彼がゲイであると担任から報告があり、生きづらさや不登校の背景に性的指向のことで悩んでいるのではないか、どのような関わりが当事者の生徒にとって役に立つのであろうかと考え始めた矢先のことでした。自分たちは何も気付いていなかったのではなく、当事者である生徒の存在を知っていたのです。それなのに何もできなかった」と繰り返しおっしゃった。

先生方が同じような経験をすることがないよう、リスクマネジメントの観点からも、学校でLGBTについて真剣に向き合い、実効性のある具体的な対策に乗り出さなければならない。

※ Matsumoto T, Imamura F(2008) Self-injury in Japanese junior and senior high-school students: Prevalence and association with substance use. Psychiatry Clin Neurosci. 2008 Feb;62(1):123-5.