学校経営を効果的に~「学習する組織」の理論でやってみよう(1)学校経営に哲学と戦略を

eye-catch_1024-768_yonezawa_fin横浜国立大学教授 米澤 利明

「この世で唯一変わらないことは、この世のすべては変わり続けるということである」。

世界で言われてきた、この一見パラドックスのような真理。なるほど、確かに変わらずに存在し続けるものはない。もちろん学校もその例外ではない。昨今の学校を取り巻く状況を考えると、この真理が頭をよぎる。しかし、変化が当たり前といわれる時代になっても学校はなかなか変わらない。学校は、変わらない組織、変わらないシステムの代名詞ともいえる。これまでの数々の教育改革が、いわば不発に終わってきたことは周知の事実である。

これから本欄で7回にわたり紹介する、「学習する組織」を提唱するピーター・M・センゲ(以下、センゲ)も、学校には持続的なイノベーションを難しくする特性があり、まさに「身動きできない」システムとなっていると分析する。

それでも今、学校はこれまで以上に社会の要請を受け、変わることが求められている。なぜか?

1つはこれまで以上に高度な「深い思考力」の育成が、学校教育に求められるからである。それには、これまでとは違う、いくつかの理由がある。教育学者の多田孝志氏は、次の3点を指摘する。

第一は、異なる文化・価値観を持つ人々と、相互理解の難しさを前提にしつつ共存する多文化共生社会の現実化への対応である。第二は、人工知能が人間を超え、テクノロジーが変化し人間生活が変容する未来予測とされる、シンギュラリティの衝撃への対応である。人工知能が人間を超えていくとしたら、人間の優位性とは一体何であろうか。第三は、これからの社会を牽引すべきわが国の青少年の、グローバル化する世界に逆行するかのような「内向き志向」傾向への対応である。

こうしたことを背景に、新しい学習指導要領においても、「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習が強調されている。

しかし課題は、大きく2つある。1つは「深い思考力」とは何かについての探究が、まだ十分ではないこと。もう1つは校長のマネジメントを含め、「深い思考力」を生み出すために学校が組織としてどのような方途、教育措置によって育成されていくのか、学校の組織マネジメントの哲学と戦略等が明確でないことである。

この2つの課題の探究が十分でないと、教育実践が皮相的、形式的になり、真に学習者の思考力向上につながらない学びが多発する。

本欄においては、「深い思考力」を育成するための学校経営について、センゲの「学習する組織」の概念に学びながら、7回に分けて具体的事例を挙げながら提示していきたい。

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横浜国立大学大学院教授。神奈川県立総合教育センター研究開発課長、横浜国立大学附属横浜中学校副校長、神奈川県公立中学校長を経て現職。