LGBTの児童生徒の学校生活~教員に求められる理解(6)学校で今すぐできる取り組み

eye-catch_1024-768_hidaka宝塚大学看護学部教授 日高 庸晴

いじめ被害、不登校、自傷行為、自殺念慮・自殺未遂といった危機的出来事の経験率が、LGBTにおいて極めて高率であることを既にお伝えした。ではすぐに学校でできる取り組みは、どういったことがあるだろうか。少なくとも5つあり、これはすぐに着手可能だろう。

(1)教員研修を実施する。

(2)授業を実施する。

(3)(授業実施のハードルが高く、準備時間を確保できない場合は、ホームルームや朝の会、帰りの会などで)LGBTに関する肯定的な情報や、出来事について話題にする。

(4)保健室や図書室に関連する書籍を配架する。

(5)児童生徒向けの壁新聞や啓発ポスターを掲示する。

筆者は奈良県高等学校人権教育研究会の先生方と3年にわたって、多様な性を考えるための授業案、パワーポイントや配付資料などの教材開発、指導上の留意点をまとめる取り組みをしてきた。

50分という短い時間を、有効かつ最大限効果的な時間とするため、外部講師の登用ではなく、あえて担任が授業者となるようにした。日ごろの信頼関係や、身近な言葉で伝えることが重要であると考えたためである。

授業は、身体の性別、こころの性別(性自認)、社会的な性別(性別役割や性別表現)、好きになる性(性的指向)について解説。性的マイノリティに特化するのではなく、全ての人にとって、性やその多様性に思いを巡らすことができるようにした。

その際、芸能人や有名人の話題を出すのは避け、特別な人のことではなく、一人一人の在り方を考える問題として学習するよう伝えた。

また、HIV陽性ゲイ男性の手記をグループで読み込むことにより、当事者が社会の中でどのように生きづらい思いをしているのか、誰がその生きづらさを強いているのか等、ディスカッションする時間も設けた。

奈良県内13の高校の生徒を対象に、授業の前後に質問紙調査を実施し、授業の教育効果を測定した(有効回答数2146人)。

その結果、LGBTへの抵抗や偏見を持っていた生徒の4~5割が、肯定的な意見や態度に変化した。

このことは、たった一度の授業が、彼らの人生を変え、当事者の生徒に支援的な環境になるともいえるだろう。

授業をすぐに実施できない場合は、たとえば同性パートナーシップ制度を導入した国内自治体の話や、欧米諸外国における同性婚の取り組み、当該集団における差別や偏見に基づく事件について、当事者の励みになるような視点でホームルーム等で「話題にする」のは比較的容易であろう。

また、LGBTに関する児童生徒向けの図書が多く出版されるようになってきており(例えば拙著『もっと知りたい!話したい!セクシュアルマイノリティ ありのままのきみがいい1~3』(汐文社))、保健室や図書館に配架することは、学校からの積極的な情報提供となる。図書室入り口にLGBTコーナーを特設したり、当事者支援のNPOが制作した啓発ポスターなどを校内の目立つところに掲示したりして、当事者である児童生徒への応援のメッセージとしている学校もある。

学校で今すぐにできることがあり、ぜひその取り組みに着手していただきたい。