学校経営を効果的に~「学習する組織」の理論でやってみよう(4)まずは「志」を再考しよう!

eye-catch_1024-768_yonezawa_fin横浜国立大学教授 米澤 利明

今、学校に求められている「主体的・対話的で深い学び」は、全く新しい学びというわけではない。これまでも取り組んできたことではある。しかし、学校が組織として、意図的には取り組んでこなかった。

その背景には、ピーター・M・センゲが『学習する組織』(2011)の中でいう、「メンタルモデル」に相当する「考える学力」、すなわち「深い思考力」の育成よりも、受験等で活用できる「覚える学力」を重視する「教師の学力観」があるからである。では、「深い思考力」の育成を重視する、パラダイムシフトともいうべき学力観の転換が、学校という組織で可能になるのだろうか?

センゲは、組織全体とメンバー個人の「志」に着目する。すなわち、「共有ビジョン」と「自己マスタリー」である。

あなたの学校では、ビジョン(学校目標や教育目標等)が全教職員に共有されていて、それに教職員個人個人が「自分事」として取り組んでいるだろうか? もしや、ビジョンはあるが、「飾り物」「絵に描いた餅」的存在になっていないだろうか? いくら見事なビジョンであっても、また、どんなに整然としたグランドデザインがあっても、それが本当に機能していなければ何にもならない。

学校マネジメントコンサルタントの妹尾昌俊氏は著書『変わる学校、変わらない学校』(2015)で、停滞している学校と機能している学校には、到達目標の共有の度合いに大きな差があることを、次のように指摘する。「停滞している学校は、目標が抽象的で不明確。重点化せず多方面に力を割こうとして、結局は多くのことが進まない。目標を立てても、教職員は本気でやろうという気持ちになっていない」。

センゲも同様の指摘をしている。学校という組織が主体的、自律的に行動する最大のカギとなるのは、「共有ビジョン」と「自己マスタリー」の方向性の一致にあり、「根源から創造する生成的学習は人々が自分たちにとって大いに意味のあることを成し遂げようと懸命に努力しているときのみに起こる」。つまり、組織のメンバーがビジョンに対して「仕方なくするのではなく、自らそれを望み、選択するか」が重要で、メンバーが共感し、日々の活動の中で意識するような「共有ビジョン」があるからこそ、メンバー間の学習のエネルギーが生まれるというのである。

子供たちの「深い思考力」を育んでいくときにも、同じことが言える。それは子供たち自身が「深く考える」ことに意義があると自覚し、愉悦を感じたときであろう。

つまるところ、「志」とは、「自分たちは何を成し遂げたいのか?」という問いに対する答えに他ならない。