学校経営を効果的に~「学習する組織」の理論でやってみよう(6)センゲの「3つのプロセス」

eye-catch_1024-768_yonezawa_fin横浜国立大学教授 米澤 利明

「授業改善のリーダーとして大きな成果を挙げていたのに、異動先の学校で受け入れられなかった」「校長として赴任先の学校で、意欲的に学校改善に取り組んだが、教員から協力が得られなかった」。

学校を異動しなくとも、新しいことを提案して抵抗を受けてしまう、そんな経験はないだろうか。

そのような時、あなたはどうするか? 多くの場合は、「説明が不十分だったのか?」あるいは、「もっと相手の話を聞く姿勢を取るべきだったのか?」と、まずは自分の態度や行為を改めてみるだろう。

しかし、一向に事態は好転しない。やがて、「私の主張は間違っていないのに、なぜ言っていることが分からないんだ?」と怒りがこみ上げ、相手の態度や性格、最後には人格を否定してしまったり、また逆に事態を変えられないことに自信をなくし、自分自身を責めることになったりする。

ピーター・M・センゲは、新たな取り組みが成果を挙げるかどうかの決定要因は、態度や行為ではなく、「心のあり方」にあると指摘する。そして、推進者が組織に深遠な変化を導き出すために必ず通り抜けなければならない「3つのプロセス」を提示する(『出現する未来』(講談社、2006))。

第1のプロセスは、まず自分の思考や判断を一旦「保留」し、組織全体を外側から「観る」ことである。人や組織は、無意識にこれまでの行為や判断・思考の習慣的なパターンを再現する。これを「ダウンローディング」と呼ぶが、これがメンバー全員に浸透していることで学習障害が引き起こされている。このモードに組織が支配されていることに気付き、それを止めるために、まず自分の思考を開き、自らの判断を「保留」して、ありのままを「観る」のである。

さらにセンゲは言う。「あいつが悪い」「あれが原因だ」と指を差した時、人差し指はたしかに相手に向いているが、中指、薬指、小指の3本は反対に自分の方を指している。

この3本の指は、誰かのせいにする都合のいい話を乗り越えて、自分もまた問題の一部であると教えてくれる。自らの心を開き、相手の行動に対し深い理解を共感的に得ること、肩書きやメンタル・モデルを手放し、共創的で探究志向の対話を育むこと、これが第2のプロセスである。

第3のプロセスは、個人ビジョンと共有ビジョンの再構築である。自分たちが本当に望んでいることは何か、新しい選択を共に語り合う、言い換えると意志を開き合うプロセスである。新たなビジョンの実現のため、試行錯誤を繰り返し、共通の理解を絶えず深め、さらにビジョンを明確にしていくのである。

「どんなレベルのリーダーでも、この3つのプロセスを通り抜ければ、可能なことに限界はない」。センゲの言葉である。