目指せ管理職 学校管理職合格講座 IV(23)校長の対応、判断

eye-catch_1024-768_kyouikukanri教育新聞 教育管理職研究会編

学校事故の実際から
○事故の発生状況と学校の対応

体育の授業でハンドボールの試合中、転倒防止策が講じられていないハンドボールゴールのクロスバーに被害生徒がぶら下がり、ゴールとともに転倒し肝臓が破裂する事故が発生した。なお、校長は出張のため不在であった。

▽被害生徒の胸から腹部にかけクロスバーがかぶさるような状態で下敷きになった。周りの生徒たちは転倒した被害生徒がふざけていると思った。

▽事故発生現場から約30メートル離れた位置にいた指導教諭が救助に駆け付け、生徒を救出し腹部の状態を確認したが、目立った外傷もないので一人で歩いて保健室に向かわせた。被害生徒は照れ笑いしながら「大丈夫、大丈夫」と手を振って歩いて行った(※指導教諭は体育の授業を中断。被害生徒の症状を確認し、近くにいる管理職や教職員に応援を要請し担架等で被害生徒を保健室に運び応急手当を行うべきである)。

▽体育の授業終了後、報告を受けた教頭が保健室で被害生徒に状態を尋ねたら「大丈夫です」と答えたため、少し保健室で休んで落ち着いたら教室へ行かせるよう養護教諭に指示した(※教頭は被害生徒の応急手当等を確認後、医療機関への搬送手配の指示、外出先の校長に事故の発生状況を報告。被害生徒の保護者に事故発生の概況や搬送先の医療機関名等を連絡(第1報)するべきである)。

▽しばらくすると被害生徒が脂汗を流し苦しんでいるので、養護教諭が腹部を押すと強い痛みと吐き気を訴えたので教頭に報告、校医(整形外科)に連絡後、タクシーで病院に緊急搬送する。校医(整形外科)の診察後、詳しい検査が必要と市内の国立病院を紹介され、車で10分ほど離れた国立病院(専門分野は内科)で診察を受ける。

▽国立病院の検査終了後、担当医から教頭に「肝臓が破損しているので、保護者の到着を待って緊急手術が必要」と伝えられる。教頭から外出先の校長と保護者に連絡。教育委員会には校長から報告(※被害の詳細や搬送先の医療機関名、医師の診察結果の情報を整理し第2報の連絡を保護者に行う。以後、正確かつ敏速な連絡と情報の共有に努めるべきである)。

▽担当医から母親に、非常に難しい手術なので、国立病院から隣接市の国立大学付属病院に搬送したい旨の説明が行われた。救急車で大学病院に搬送。大学病院の担当医から診察・検査結果、今後の治療方針等が説明された。「肝臓が破損し、750ミリリットルの血液が腹部に溜まっている」という。外科手術を行った場合、一気に血液が流れ出て命にかかわるので、カテーテル手術で肝動脈からの出血を止めた。腹部に溜まった血液は、被害生徒自身の体が自然吸収する治療法で対処することとなった。

▽腹部に溜まった750ミリリットルの血液は腹部を圧迫し被害生徒を苦しめ、その苦しさを見つめる両親の顔も厳しく教職員を寄せ付けないものがあった(※学校は、被害生徒の保護者に寄り添い、信頼関係にたって事態への対処ができるよう、対応の責任者を決め、常に情報の共有化を図る。また、保護者の要望や状況に応じて、信頼できる第三者(スクールカウンセラー等)を紹介し、相談・支援が受けられるようにするべきである)。

○事故発生時の対応ポイント

(1)事故発生時に管理職が不在の場合でも最悪の場合を想定し、組織的対応が行えるよう指揮命令者を明確にし、役割分担等、組織全体の見直しを行う。特に、頭部、目等の危険な箇所の負傷については、専門医の診察を優先したい。

(2)事故発生時はさまざまな対応を集中して行う必要があるため、的確な方針と実施のための人員が必要になる。教育委員会に報告・支援を要請する。

(3)学校の管理下で発生した児童生徒の災害に対しては、独立行政法人日本スポーツ振興センター法の規定による「災害共済給付制度」による救済制度について被害児童生徒の保護者に説明する。

(4)被害児童生徒の保護者や全校の児童生徒および保護者に対して、事故の原因と考えられることを広く集め検証し、今後の事故防止に生かすために、事故当日の過程や原因を可能な限り説明をする。

関連記事