学校経営を効果的に~「学習する組織」の理論でやってみよう(7)「PDCA」からの脱却!

eye-catch_1024-768_yonezawa_fin横浜国立大学教授 米澤 利明

授業改善や学校改革の取り組みは、少しも特殊なことではない。どんなとき、どんな時代であっても、常に努力しなければならないことである。実際、どの学校でも毎年毎年程度の差はあれ、不断に努力してきたはずである。しかし、今求められる「深い思考力」の育成の視点から評価すると、まだ学校の変革は不十分であることも事実である。

振り返ってみれば、生きる力の育成という考え方が示された平成8年の中教審『21世紀を展望した我が国の教育の在り方について』(第一次答申)では、「知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から、子供たちが、自ら学び、自ら考える教育への転換を目指す」ことが明確に提言されていた。

あれから二十年余。なぜ、これまで毎年努力を重ねてきたにもかかわらず、改革は不十分のままなのだろうか?

ピーター・M・センゲは、学校を組織として変容させるために、もっと戦略的に考え、行動することの必要性を説く(『学習する組織』(2011))。その一つが、これまでの「PDCAサイクルによるマネジメント」からの脱却である。

計画(P)を立て、行動(D)し、その結果を検証(C)し、改善策を実行(A)して、計画にフィードバックするというサイクルは、いわば「過去からの学習」である。

過去には当然、未来は存在していない。存在していない未来はまだ経験できない。ここに組織のぶつかる学習ジレンマ(矛盾)の核心がある。

センゲは言う。過去の経験に基づいた「メンタル・モデル」をダウンロードし、過去の成功体験に沿った形で問題を解釈し、解決法を探る。こうした変革意識では、新しいことは生まれてこない。

確かに、学校での「年度末反省」の会議を思い起こしてみれば、センゲの言うとおりかも知れない。

センゲは、「学習する組織」では、PDCAのような単純な「シングル・ループ学習」ではなく、より高次な「ダブル・ループ学習」を導入することを提案する。この学習は、計画とその前提(方針や考え方)との間に、「前提そのもの」を検証するループを新たにもう一つ構築するというものである。

つまり、過去の経験に縛られた「メンタル・モデル」の修正を図り、未来の望ましい状況に立脚した「新たな計画」を立案するための前提を再構築するのである。

先に紹介した答申では、さらに個性を生かす教育を重視することや、子供たちを多元的・多様な物差しで評価すること、一人一人のよさや可能性を見いだし、それを伸ばすという視点を重視することなどが提言されていた。

当然、未来に生きる子供たちのために、学校は組織として機能するよう、絶えず改善の努力をしなければならない。

(おわり)

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