目指せ管理職 学校管理職合格講座 IV(24)校長の対応、判断

eye-catch_1024-768_kyouikukanri教育新聞 教育管理職研究会編

教員の進退問題から
○熱血教師から「退職願」が出された

A教諭は、一人暮らし。○○県出身の体育科の中学校教員で、2年生の学級担任および女子バレーボール部の顧問として活躍していた。特に、女子バレーボールの指導には抜群の指導力を発揮し、この年、県大会で優勝させた実績を持ち、部の生徒やその保護者等から絶大な信頼を得ていた。朝練習から放課後の練習、一年を通して土日返上の猛練習に打ち込んだ。A教諭の生活は、一言で言えば、部活に打ち込んだ毎日であったといえる。

新年度に入り、A教諭に変化が現れた。4月、受け持つ体育の授業に時々遅れるようになった。さらに、この月に3回勤務時間に30分ほど遅刻した。5月、連休前に、1回の遅刻があり、連休明けに無断での欠勤となった。この間、校長による本人への指導(なぜなのか、どうすべきか、教員としての責任やあり方など)は繰り返し行われた。

しかし、その後、本人から年休の申し出があり、本人は父母の暮らす○○県に帰ったと母親から連絡が入る。校長として、本人と父母を含めて話し合う必要性を感じ、○○県に赴き、「本人にとってベストな今後について」を基本に話し合った。この話し合いを通し、本人から「退職願」が校長に手渡された。

○校長としての対応のポイントを考える

重要なのは次の2点である。

「生徒の成長を第一に考える」

「一人ひとりの教職員の幸せ、自己実現を心から願う」

次に対応の要点を示す。

(1)本人、生徒、同僚の様子や気持ち等を正確に把握する。

校長・教頭による授業・部活動の参観や他の教職員、担任の生徒やバレー部員などから直接聞き、正確な勤務状況の把握をする。そこから見えてきたのは、一般の生徒からは、「授業を軽視し、やる気の無い先生」と問題視されていること。他方、バレー部の生徒・保護者からは指導力に富み、絶大な信頼を得ていること(授業軽視の問題点は保護者に正確に伝わっていない)。同僚の教職員からは、「部活動への熱意は認めるが、最も大切な授業を軽視することは許されない」「長年の夢であった県大会優勝を達成し、その主力選手の卒業とともに、燃え尽きたのではないか」などであった。

(2)本人を理解しようと努め、丁寧に話を聞き、相談に乗ること。

本人のアパートは、ゴミが散らばり、酒の瓶などが重なっていた。その部屋で、本人と向き合う。これまでの生活、部活への思い、現在の心境などを時間をかけてじっくり聞いた。校長として着任して、まだ2カ月、人間関係はまだできていない。しかし、丁寧に聞く。徐々に心境を語り始めた。やりきった後の無力感や学校に足が向かないことなど。

自分の行為が、生徒・保護者の教職員への信頼感を損ない、教育活動に悪影響を及ぼすことを説き、無断欠勤は身分上・職務上を含め、法的にも許されないこともじっくりと話し合った。また、精神的負担をなくすためにカウンセラーや専門医への相談の話もした。

(3)本人の「よりよい生き方」を柱に話し合う

繰り返しの話し合い、指導を行ったが、彼は父母のいる実家に帰った。校長として、本人と話し合うため○○県の実家を2度訪ねる。当初、本人は会うことを拒んだが話し合いに応じた。父母にこれまでの経緯を話すと同時に、「自分の現状をどう考えるか」「自分のよりよい今後」を柱に終日話し合った。夕刻、「教職を続けるよりは他の職を考えたい」と本人の気持ちが述べられた。新しい職の選択には少し時間をかけたいとのことであった。そして、家族の納得の上、本人から「一身上の都合による退職願」が校長に手渡された。

(4)校長の保護者会での対応で学校への信頼を得る

校長として、A教諭の退職後、直ちに担任クラスの保護者会を開き、後任の教員のことを含めて説明し、生徒、保護者の不安の解消に努めた。ほとんどの保護者は、担任を代えることは当然のことと賛意を示し、安堵感と校長の対応を理解してくれた。他方、バレー部に関わる一部の保護者から「なぜ、A先生はやめたのか」「校長が無理に辞めさせたのではないか」などの校長に対する非難、質問が次々に上がった。

それに対し、本人の出した退職願の実際、「退職は、本人の一身上の都合によります」と繰り返し説明し、会を終了した。その後、この件についての問い合わせ等はなかった。校長は、学校の様子が保護者へ必ずしも正確に伝わっているとは限らないことを念頭に置いておくことも大切である。

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