教員のワーク・ライフ・バランス ― 制度を変えなくてもできること ―(2)職員室の風土を変える

eye-catch_1024-768_sawata先生の幸せ研究所代表 澤田真由美

現在私は学校向けにワーク・ライフ・バランスをお伝えしているが、実は私自身、教員だったはじめのうちは、過労死ラインを超える長時間労働をしていた。身も心もボロボロでうつ寸前。悪循環の毎日で保護者ともうまくいかず「いつ辞めよう」と考え続けていた。

しかし、ワーク・ライフ・バランスという考え方に出合い、180度全てが変わり、残業をほとんどしなくても保護者や子供に喜ばれるようになった。

教員のワーク・ライフ2その時に分かったのは、決して「時間をかけるから良い教育」ということではなく、「限られた時間でどこにエネルギーを注ぐのか」を意識するのが、教育の質を上げるということ。苦しかった昔の私のような人が目の前にいるかもしれないという思いが、今の私の原動力だ。

「働き方の見直しは人を増やさなければできない」という意見も聞く。しかし、人が増えるまでただ待っているということでは、このまま疲弊して教育の質を落とし続けるのを見守っているようなものである。

現状でもできることはあるし、実際人を増やしたが、むしろ忙しくなったという例もある。人を増やすときには留意することがあり、それについては今後の連載の中で触れていくつもりだが、今回は時間に頼った職員室の風土を変えるために、すぐできることを紹介する。

現在の職員室では、早く帰るのは仕事が早いことだと浸透しているだろうか。何気なく言っている言葉が間違った価値付けをしてしまっていることを、よく見かける。

「遅くまでありがとう」はねぎらいなのだが、言われた方は「遅くまでやってほめられた」と受け取っている。その言葉掛けに、余裕をもって終わらせている人は疑問を感じている場合もある。特に管理職の影響力は大きく、頑張ったことをねぎらうのは人として当然としても、仕事の評価と混同させない配慮が必要である。

「みんなの分までありがとう」というのも、思わぬ方向に価値付けしがちだ。言う方は純粋に感謝しているだけでも、言われた方は「一人でやったことをほめられた」と受け取る。そして時間をかけてでも一人でやり切ろうとして疲弊し、いずれ質を落とす。特定の人のおかげで学校や学年が成り立っている属人化状態では、特定の人は疲弊するし、全体としても成長や時間を生み出さない。

先日ある学校での話し合いがとてもよかった。いつも特定の先生が学年だよりやその他準備をさっさとやってくれてありがたいが、その先生がいないと学年の仕事がストップしてしまうし、実は周りもそれらの仕事を覚えて成長したい、先を見通して仕事をできるようになりたいので、「うまく仕事を渡して全体のスキルアップをしよう」というもの。

「この先生でないとできない」ということを減らすほど、学校全体としてはパフォーマンスを上げると同時に時間を生み出す。管理職や主任ならば、風土づくりのしかけをしていく必要がある。

時間に頼った風土を変えるには、日頃から「時間を意識して仕事の質を上げる」ことに価値を置いていく必要がある。それには定時退勤日や勤務時間管理を呼び掛けるだけでなく、上記のような何気ない言葉掛けを見直すことが一歩目である。

そして、この学校のような話し合いが日常的に見られるように仕組んでいく必要がある。