クオリティ・スクールを目指す(114)いじめ調査についての疑問

eye-catch_1024-768_takashina-school教育創造研究センター所長 髙階玲治

なぜいじめは増え続けるのか

日本の犯罪件数は戦後最低、犯罪率はシンガポール、ルクセンブルグに次いで世界3位になったことで海外から驚きの目で見られている。日本国民としては喜ばしいことである。

それに対して10月27日の新聞報道でみた28年度問題行動等調査結果は意外な印象を受けた。その報道は、児童生徒の暴力行為、いじめ、自殺についてのものであるが、特に「いじめ認知最多の32万件」ということで前年度よりも10万件近く増加している。数字だけをみると1年に44%の増加で驚かされる。

いじめは、自殺行為という深刻な問題を含んでいて社会的な課題となっているが、そのために道徳指導の強化など各学校は多様な対策を行ってきたはずである。つまり、指導が強化されていくと、いじめ件数は少なくなるのが当たり前のように思えるが、逆に増加し続けているのはなぜであろうか。

大きな理由は調査のやり方が変わったためという。平成6年に「いじめの定義」を「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じるもの」とされていたのが、11年に改定し、さらに25年には「一定の人間関係のある子供が心理的・物理的な影響を与える行為で、相手の子が心身の苦痛を感じているもの」とされた。解釈の幅が広くなって件数の増加につながりやすくなったといえる。ただ、この定義は昨年も同様だった。

それが今年になって急激な増加である。異様な感じである。

調査件数は「冷やかしやからかい、悪口や嫌みを言う」6割以上というが、解釈によってけんかやふざけ合いまでも、教師の判断で「いじめ」とされる一方、小学校低学年は小競り合いが多く、調査に含める意味があるのかと疑問視する声も多いという。

また、都道府県によっていじめ把握件数が大きく異なるのもよくわからない。子供千人当たり、京都府は96.8件で最多、香川県は5.0件で最小だった。数が少ないと把握が十分でないと教委から指導が入るとされ、ある小学校長が少し増やしました、と語っていた。調査数値への信頼度は高くない。

いじめ調査は必要だが、肝心のいじめ問題への子供の指導はどう改善されてきたのであろうか。調査の数字のみが重視されるが、いじめ指導の効果的な在り方が教師に伝達されているのであろうか。それはいじめ問題へのその場対応のみではなく、いじめは起こりうるという前提で、将来の社会生活も含めて、いじめ問題への対処の仕方や、何よりも人権感覚を育てることが重要である。

文科省調査は、際限もなくいじめ件数が増加することを期待しているはずがなく、国民も減少に向かうことを期待しているのではないか。

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