「成長の授業」を創る―菊池実践11の柱―(5)価値語でプラスの方向に導く

eye-catch_1024-768_kikuchi教育実践研究家(元小学校教員)菊池省三

「価値語」とは、考え方や行動をプラスの方向に導く、価値ある言葉のことである。私の学級で生まれ、全国の教室に広がっていった代表的な価値語には、「一人が美しい」「人に正対せよ」「出席者ではなく参加者になる」「出る声を出す声にしよう」などがある。

「言葉は原体験を求める」と言われるが、人は誰でも新しい言葉を知ると使いたくなるものであり、プラスの言葉を獲得すると行動もプラスに変化していく。

〇「成長の授業」を創る-菊池実践11の柱5成長に向かっている学級にはプラスの言葉があふれているが、荒れたクラスにはマイナスの言葉が飛び交っている。プラスの価値ある言葉を、子供たち一人一人の心の中にどれだけ届けることができるかが、学級づくりを大きく左右する。

平成に入ったころ、私が着任した学校は地域的にも厳しく、一斉授業をベースとした方法では通用しなかった。そうした中で、コミュニケーション教育に取り組み、子供との関係をつくりつつ、規律を正していく指導をする必要性を感じていた。

子供たちにピリッとした緊張感を持たせたいときに、「こうあるべきである」「こういう生き方の方が美しい」といった、父性の強さを前面に出した言葉掛けをしていたが、それを「菊池語録」と子供たちが活用し始め、さらに価値語へと進化していったのである。

価値語を獲得した子供たちの生活態度は落ち着き、学級の人間関係が良くなり、学習に向かう構えができ、言葉への意識が高まっていった。

その後、価値語は蓄積され、新しい学級で指導すると、そこでまた新たな価値語が生まれていく。

私が示した基本的な価値語が子供たちの中に入っていき、自分たちのものになると、次には子供たち自身が価値語をつくり、あるいは見つけ、大事にしていく。

子供たちの成長と共に、価値語が教室で生まれ育っていくのである。

こうした価値語と、それを象徴する望ましい行為を撮影した写真をセットにした「価値モデル」という掲示物を教室に貼ることによって、価値語が可視化され、日常的に目に触れることで、子供たちの成長は加速していく。

この連載で紹介している11の指導の一番の核となるのは、価値語である。どの取り組みの中でも、絶えず成長を考えながら、言葉を大切にした指導を進めたい。

「言葉が心を育てる、人を育てる」のは間違いないことであり、小学校の教室だけではなく、広く社会をもプラスに導くものであると確信している。