教員のワーク・ライフ・バランス ― 制度を変えなくてもできること ―(3)業務を精選し教育の質を上げる

eye-catch_1024-768_sawata先生の幸せ研究所代表 澤田真由美

ワークライフバランスと聞いて、アレルギー反応を示す人がたまにいる。「それ嫌い」と。多くは、勘違いが原因だ。よくある勘違いは、「仕事があるのに周りに押し付けて帰ること」「適当に働くこと」というもの。しかし、本当のワークライフバランスとは【教育の質を上げること】そのものだ。

ワークライフバランスとは、何でもかんでもばっさりとスクラップしたり手を抜いたりすることではなく、必要なところに必要な時間をかけられるように、業務の全体をデザインし直すことに他ならない。一つ一つの業務を見直すためには、その業務を「何のためにしているのか」をよく考える必要がある。

教員のワーク・ライフ・バランス3よくあるのは、「何のため」がぼんやりとしていて、「全てが子供のため」「全てがやらなければいけない大事なこと」になってしまうことだ。それでは業務量過多で教育の質を落としてしまう。

時間は有限である。目指すものが明確ならばやるべきことははっきりし、同時にやらなくていいこともはっきりする。

学校なら学校目標、学級なら学級目標をピンと明確にすると、それを基準にスクラップできるようになる。自身の学校目標や学級目標は言えるだろうか。目指す教育は明確だろうか。

隣の学校や学級と違うことや、今までと違うことを必要以上に怖がる学校や教員も多い。「批判されるのでは」という心配をよく聞くが本当だろうか。

私澤田自身の経験だが、小学校低学年担任時の参観の際、他の2学級と違う教科をした。当時の勤務校では参観授業は同学年同内容が暗黙の了解だったので、覚悟が要った。だが、校内からも保護者からも批判は一つもなかった。

「批判される」というのは妄想に過ぎず、何を恐れていたのかと拍子抜けだった。遠足やペーパーテスト、職員会議の廃止に踏み切った学校長たちに言わせれば、「批判されると思い込んでいるだけ」だそうだ。

軸があれば、覚悟を持って必要なことを選び、不要なものは捨てられる。もし求められれば説明もできるので、相手は納得、むしろ信頼してくれる。

横浜市立中川西中学校の平川理恵校長は部活動について、このように保護者に伝えている。「そもそも部活動は教育課程外で教員の善意でやっている。練習時間が長い短い、SNSを使わないでほしいなど、クレームには対応しません」。読者の中には過激に思う人もいるかもしれないが、これにより保護者は学校の応援者となり、部活動への要求はなくなり、学校はそれに対応する時間から解放された。

するべきことは、「教師として何を目指すのか、学校として何を目指すのか」。これらを突き詰めて、絶対に削れない「幹」は何なのかを考えることだ。それが要・不要の基準となる。

管理職であれば、こうしたことを一人一人の教員が考える仕組みを作ったり、考え始めるように質問を投げ掛けたりする必要があり、校内研修やキャリア面談や各種会議をうまく活用していただきたい。

「教育の目的を果たせるようにすること」が業務の精選であり、これをしていくと「大切なこと」を「大切にできる」ようになるので、教育の質は上がる。