本と人との「知」の化学反応~実践ビブリオバトル~(8)高専生におけるビブリオバトルの効果

eye-catch_1024-768_biblio-battle「興味を持たなかったジャンルの本に出会えた」「友人の新たな側面が知れた」――。

ビブリオバトルを授業で経験した本校の学生を対象に「ビブリオバトルの効果」をアンケートしたところ、スピーチやプレゼンの練習としての効果よりも「多様性」との出会いに興味を抱く者が多かった。それを反映するように、ビブリオバトルを繰り返す中で、「他の出場者がどのような本を持ってきたか」を気にする学生が増えてきた。本をツールに話し手のことを知ろうとする質問へと、ディスカッションが変化してきている。

昨年11月19日に「全国大学ビブリオバトル2017」の四国Bブロック地区決戦が、高知市の金高堂書店本店を会場に行われ、県内予選を通過した4人の「ビブリオバトラーたち」が首都決戦進出を目指してビブリオバトルに臨んだ。大会終了後、バトラーたちに「ビブリオバトルの魅力・面白さ」についてインタビューした。「日ごろ知ることのない本を手にする機会が生まれること」「自分が好きな本とは異なる傾向の本に出会えること」「さまざまな系統の本に出会えること」「自身の生き方が本の読み方に出る。そしてそれを互いに知ることができる」という答えが返ってきた。

ビブリオバトルを楽しむ高専1年生
ビブリオバトルを楽しむ高専1年生

今回のバトラーたちが挙げたビブリオバトルの魅力を一言で表すなら、「多角的な視点を獲得し、多様な価値観に触れる」ことにあるといえる。現代社会では多様性が求められる。それを表すように、2020年度からは、思考力・主体性・多様性・協働性などの時代のニーズに沿った新しい大学入試制度が始まる。

一定の視点に固執せず、従来持ち合わせなかった「ものの見方」を取り入れ、角度を広げて考えることによってのみ新たな価値の創造は可能となる。そうした態度を養い、柔軟な考え方から新たな発想を生み出す能力が、次世代の技術者を目指す高専生にも求められている。

人工知能の発達に伴う知識や技術の機械化が進むと、技術者は、従来の役割を機械に譲り、機械化できない部分を仕事として担わねばならない。他者とのコミュニケーションの上に成り立つ人と人とのつながりの創出と、多様性を受け入れ、さまざまな角度から物事を捉えた先にある新たな価値の創造は、それらが人間であるからこそ、可能な仕事となる。

ビブリオバトルの取り組みなどを通して、楽しみながら「多角的な視点を獲得し、多様な価値観に触れる」経験を増やすことが、高専生たちの将来にとって、何よりも必要である。

佐藤元紀(高知工業高等専門学校講師)※本連載は教育現場でのビブリオバトルの実践者らが1人2回ずつ担当して寄稿する。

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