教員のワーク・ライフ・バランス ― 制度を変えなくてもできること ―(6)お手本の横展開を

eye-catch_1024-768_sawata先生の幸せ研究所代表 澤田真由美

ワーク・ライフ・バランスは時間を生むだけのものではなく、「教育と人生の質を上げるもの」であると、これまでお付き合いいただいた読者の方々はすでにお気付きだと思うが、改めてこんな声をご紹介したい。現在澤田が支援中の、大阪府高槻市立北大冠小学校の今奥校長の声だ。

「この取り組みは授業と相性がいい。学校改革になる。時間を生むだけのつもりだったが、学校目標を目指し、教職員みんなで学校をデザインし直す大きなきっかけになった」

つまり、今奥校長は働き方の見直しは、「手を抜くことではなく、教育の質を高めること」だと実感されたのだ。

階層別研修を担当すると、管理職以外の教職員はまず、自分の仕事について工夫できることが多くあったことに気が付く。感想には「できることはたくさんあるんですね」といった反応が多い。

管理職の反応は大きく二つ。一つ目は教職員同様にフットワーク軽く、「校内で早速やってみます」というもの。もう一つは、「必要性や事例ややるべきことは分かりました。でも『自分の学校』での具体的なやり方が分からないんです」というもの。「職員室の反応はどうだろう……」と気になり、腰が重くなるという。

しかし、どうか思い出していただきたい。管理職の先生方はそれまで、児童生徒集団をまとめあげてきた、教育や集団づくりのプロである。管理職となっても教室も職員室も変わらない。「学級」のために試行錯誤することと、「学校」を働きやすい場にすることは同じだ。

「定時に帰りなさい」「集中しなさい」だけでは、帰れる人も集中できる子もほとんどいない。管理職になる前、授業や担任をする上で日々どんな工夫をしていただろうか。すぐに効果がなくても、教師として何度でもチャレンジをしていたのではないか。働き方の見直しもそれと同じで、目の前の課題やメンバーに応じて管理職からの働き掛けは変わる。

教室で教師としての思いを語ったり、伝わっていないと感じたら言い方を変えて何度でも伝えたりしていたのではないだろうか。職員室での管理職も同じだ。

手強い教室も手強い職員室もある。個別に本音を聞いたり、事情に寄り添ったり、仕切り役を育てたり。すぐに伝わる場合も、なかなか伝わらず反抗される場合も、あって当然。働き方の見直しも同じだ。

手本となる子のやり方は教室全体に紹介するのと同様に、「信頼を集めながら早く帰る先生」のやり方や考え方を職員室で横展開してほしい。良い手本になる教職員がいても、そのやり方を詳しく聞く管理職や、職員同士で共有する機会を作っている学校はなぜかほとんどない。

授業で集中できるように、どんな手立てを講じていたか? 「集中しなさい」だけではないはずだ。「定時に帰ろう」だけでは、そりゃ帰らない。集中できるようにするためには、▽学習の意義を説く▽自分で目標設定させる▽本音を聞く▽集中したくなるような発問を用意する――など、さまざまな工夫をしたはずである。

何がヒットするかはわからない。さまざまな策を講じていくことで、少しずつ理解者が増え、多数派になり、風土が変わっていく。ぜひこれまでの教員経験で培ったものを最大限に生かして、学校の働き方改革にフットワーク軽く飛び込んでいただきたい。