教員のワーク・ライフ・バランス ― 制度を変えなくてもできること ―(7)話題にしにくい現状を変える

eye-catch_1024-768_sawata先生の幸せ研究所代表 澤田真由美

昨年末に中教審が出した働き方改革の中間まとめと、文科省が発表した緊急対策を見て、「まったくの無風状態から、よくぞここまできたものだ」と思った。

3年前、私が教員からコンサルタントになり独立する前から、すでに日本の教員の長時間労働はさまざまな調査で明らかだった。国では議論されていたのだが、学校現場に全く届いておらず、教員は「教育だからこんなもんだ」「他業種よりは、ましでは」と言っていた。しかし今、「教員」は世界や国内他業種と比べてもかなりブラックだということは、多くの教員が知っており、この間に先生の幸せ研究所への相談内容も明らかに変わった。

最近、学校現場で流行っている定時退勤日と勤務時間管理であるが、残念ながら長時間労働改善に結び付いていない。定時退勤日は持ち帰り仕事が増えただけ、勤務時間はひと月分まとめて書くので、不正確なんてこともよくある。

業務は減らないのに、これらにかかる事務処理が増えた現場では不満がたまっているので、むしろ逆効果なことも。それに気が付いた学校や自治体から、「意味のある取り組みにしたいが、どうしたらいいのか」という相談が多く寄せられる。ボトムアップの業務改善とセットにする必要がある。

今の国の動きや世論は大きなチャンスだが、多くの学校はその様子をうかがいながら、小さな業務改善(例:会議資料事前配布など)にとどまっている。思い切った改革を始めている学校は、教育委員会のバックアップがあるか、学校が独自に勇気を持って始めている場合のどちらかである。

私が教員へのヒアリングで一番よく聞く言葉は「勇気」だ。「やめる勇気」「言い出す勇気」など。つまり学校で働き方の見直しは、まだ話題にしにくいのが現状なのだ。それが取り組みの進みを悪くしている。現場に関わるワーク・ライフ・バランスコンサルタントの目線から必要だと思うのは、「教育委員会と国が、働き方見直しの取り組みにリスクを感じている学校の背中をもっと押す」ことだ。

また、小さな効果であっても、教育効果があればやめにくいものだ。一生懸命な同僚や期待する子供、保護者がいるのに、「優先度をつけて低いものはやめませんか」とは言いにくい。話題にならないので当然、検討されない。

しかしコンサルティングにおいて、校長やその他の教職員にヒアリングすると、「そもそも必要かどうかの議論をしたいものは?」の問いに対して、「部活動、研究授業、修学旅行、職員会議、宿題、補習、○○教育、家庭訪問、行事」など、大きな時間を使っているものが出てくる。

「これらをやめたら、大変なことになるのでは。とてつもなく批判されるのでは」と根拠のない不安にとらわれて、〝責任が取れない〟ので黙っているようなのだが、実際に研究指定や職員会議を廃止した市や学校で大変なことは起こらなかった。やめ方・減らし方を工夫すればよい。学校の裁量範囲は案外広い。

国や教委が「教育のプロとして決断してよい」と、改めてはっきり示せば、多くの学校の背中を押すだろう。もう一度言うが、学校の裁量範囲は広い。

そして、そうした決断をした学校を孤立させないことと、評価を下げないことが必要だ。これについては次回触れたい。

「外野が騒いでいるのに学校現場は変化なし」にしないために、国や教育委員会が取り組みのハードルを下げることは外せない視点である。

関連記事