クオリティ・スクールを目指す(118)小学生が墓地に学ぶ

eye-catch_1024-768_takashina-school教育創造研究センター所長 髙階玲治

文化と歴史に出会う場所

日本の話ではない。フランスのパリにある広大な墓地での話である。小学5年生4人が探訪する。それが、母親でもある写真家の手によって物語が創られた。

パリの墓地は、わが国のそれとは全く違う。広大な敷地に、廟(びょう)があり、モニュメントがあり、像があり、もちろんさまざまな形の墓がある。それらが一つの街を形成するように、やや雑然と並んでいる。

その探究の様子を写し出したのが、アンナ・ザヴォロンコ=オレイニチャク著『パリのペール・ラシェーズへ』(ブックウェイ、2017)である。ペール・ラシェーズとはパリ最大の墓地のことである。翻訳したのは美術教師の藤崎典子氏である。

藤崎氏は、大学在学中にパリの大学に留学、その後、東京都の中学校の美術の教師をし、最後は小学校の図工科の専科教師で終えた。中国上海の小学校との交流も10年以上続けられ、国際的な活動を行っている方である。

この図書にみられる子供の探究プロジェクトは、学校独自のもので4~5人のグループで行うが、他にも例えば、エッフェル塔やノートルダムなどの訪問と調査、パリの1週間の出来事の調査、アレクサンドル・デュマの生涯と作品の研究などがある。

異質の学習方法であって、親が参加する。ペール・ラシェーズ探究の4人は、写真家のアンナの手ほどきを受けながら、数カ月にわたって毎週月曜日の朝、墓地を訪問した。

なぜ、この墓地が重要なのか。パリ市埋葬局長は、この図書に賛辞を寄せて、「瞑想、敬意、生命の場所であり、文化と歴史の場所である。これがパリのイメージです。皆のためのパリ、共生するパリ、泣き、思い出すパリ、そして今日のいつものパリ」と述べている。

ただ、この図書は学習活動を教育レベルでは捉えてはいない。むしろ写真物語として、墓地の多様な姿、例えばエディット・ピアフや、ある王子の墓などを訪ね歩く、そんな子供の姿をさりげなく写し出している。

最初のページは「月曜日の朝、アルチュールはとても疲れて学校についた。その上、機嫌が悪かった。彼は学校の玄関にあるソファで眠り込んでしまった」という写真から始まっている。あくまでも多彩な視点から写し出す写真物語なのである。希有な図書で、なじみにくいかもしれない。

このプロジェクトは、わが国の総合的な学習に似ていると思える。子供たちは情熱的に、訪問し、インターネットで探し、街の図書館で調べ、作文し、アイデアを出し、情報を保管し、総合化することを望んだ、と担当の主任教諭は書いている。「子供たちにとって、この墓場はとてもロマンチックな『小さな村』になりました」と。藤崎氏の今後の仕事に大いに期待したい。

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